タレント片岡鶴太郎(68)が5日、東京・シネスイッチ銀座で映画「帰れない山」公開初日記念トークイベントに出席した。

「帰れない-」はイタリアのベストセラー小説を映画化。ルカ・マリネッリ(38)とアレッサンドロ・ボルギ(36)が主演。北アルプスの雄大な自然をバックに、都会から来た少年ピエトロ(マリネッリ)と牛飼いのブルーノ(ボルギ)の成長、男の友情、父と子の関係を描く。昨年のカンヌ映画祭で審査員賞を受賞している。

片岡は「見終わって、しばらくの沈黙の中で、自分だったらどうだったか考える余韻があった。映画に限らず、音楽、絵画など芸術作品はいいものと出合って、沈黙の中でいいものを見たと思うことがある」と話した。

男の友情について「お金であったり、女性関係であったが入ってくると、崩れることになるので絶対にダメ。ものすごくデリケート」と話した。

親子関係については「父親が神田の生まれで、江戸文化を愛していた。落語好きで寄席通いに連れて行ってもらっていた。小さい時は落語が分からないから色物、漫才だったり漫談、奇術とかに興味を持っていました。それでものまね芸人になったんですから、確実に父親の存在が私の人生において大きかった」。

片岡は高校卒業後、すぐに声帯模写の片岡鶴八に弟子入りした。「父親と母親は一番の応援団で見守ってくれた。父親は寄席、落語が好きだから『どうだった』と話すことが出来た。父親は1年前に他界したんですけどけど、後悔はなかった。今は父親として、後悔する親子関係にならないように、よく子供と話しますね。できる限り後悔を残さないような親子関係でいたい。父親の生前、月に1回とか会って、毎回『これで会えない』と覚悟して『じゃ、またね』とおやじの顔をチラッと見ていた」と振り返った。

お笑い芸人から俳優、ボクサー、画家、書家、ヨガの達人と、次から次へと新しいものに挑戦し続けてきた片岡。「私の場合、幸いに父親の影響で寄席の落語家、舞台人をかっこいいと思って育った。子供の頃はサイン帳を持って行って寄席の楽屋まで入り込んで、若き日の(立川)談志師匠とかにサインをもらいに行った。楽屋での芸人さんの風情、色気に子供ながら『カッケー』と思っていました。自分なりに迷うことなく、子供の頃からかっこいいと思うことをやって来た。ボクサー、絵も、自分の魂が『すてき』というものを頼りに、やりたいと思った時には始まっていた。他人に相談したことはありません」と話した。

今現在、一番尊敬しているのは「ヨガの先生。いろいろなことを相談しています。友情とは違うと思うけど」。そして「友情を大事にするなら、最低限、迷惑をかけちゃいけない。『金、貸して』とは言えない。言ってきたら『そこまでかな』と思っちゃう」と話した。

「帰れない山」について、片岡は「正統派の映画。シンプルに男同士の映画。子供の頃の出会いが、青年になって、また出合ってつらい結果になる。だからこそ胸が熱くなると同時に、僕にはそういう友がいないからうらやましさを感じる。自分の生きざまを照らし合わせたら、いろいろなことを考える沈黙がある」と話した。