歌舞伎俳優坂東玉三郎がこのほど、都内で、「八月納涼歌舞伎」(同3~26日、東京・歌舞伎座)で上演する「火の鳥」の取材会を行った。昨年共演した市川染五郎、市川團子との共演で、取材会には3人がそろった。
バレエの題材にもなった火の鳥伝説をもとにした演目で、永遠の力を持つ火の鳥を玉三郎が、火の鳥を探し求める兄弟を染五郎、團子が演じる。
脚本は数年前に出来上がっていたという。玉三郎は、昨年染五郎、團子と共演したことで「この方々と」と決め、歌舞伎化実現に向けて動き出したとした。
2人について語った言葉、舞台人として何が大切かの言葉が印象的だった。「(染五郎と團子は)非常にまっすぐに生きていらっしゃる2人。舞台に対して素直で謙虚でまっすぐあることが大事ですが、共演してみて、2人ともそうであると確信しました」とし、「どんな舞台人、音楽家でも、芸術家として我を張ったり、虚勢を張るところはあっても、芯の芯がそうである(=素直で謙虚でまっすぐであること)が、一生進歩し続けるかぎ」と語った。「芯の芯がそうであること」というフレーズは、何か強いものが心の奥底に静かにある画(え)を想像させた。
また、火の鳥にちなんで、作品も再生を繰り返してほしいかを問われると、玉三郎さんは「本当にそう思ってます。5年より先になったら、今の感覚というものが本当に鈍くなっていくと思うんです。生きていたとしても。だから感覚が鈍くならないうちに、いい作品を作ってあげたいって本当に思っていますし、できる限り僕の経験上は話してあげたい、あるいは体験させてあげたいというのが僕の強い思いです」と、染五郎、團子を見やった。2人に対してだけでなく、若い世代全体への思いなのだろうと感じた。
活躍を続ける染五郎、團子の今後に関しての話は非常に興味深かった。玉三郎は「彼らを支える女形、女房役を、歌舞伎界がどうするか」がかぎになるとした。玉三郎は、片岡仁左衛門が孝夫と名乗っていた時代から「孝玉」コンビとして、今は「仁左玉」コンビとして人気を保ち続けてきたこともあり、実感がこもっていた。「仁左衛門さんとは6つ違いなので、彼らの相手役が出てくるとすれば今14歳くらい。だからまだ変声期の最中だから見つけにくいんですが、私が生きている間にそういう人が出てきてほしい」と話した。
女形として活躍を続ける玉三郎の言葉だからこそ納得できるものもあれば、人間として共感できる部分も多くあった取材会だった。【小林千穂】



