フランスで開催中の世界3大映画祭の1つ、第79回カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを競うコンペティション部門に出品された、濱口竜介監督(47)の新作「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)の、ワールドプレミアとなる公式上映が15日、行われた。
ベルギーの俳優ビルジニー・エフィラ(48)とダブル主演した女優・モデル・映画監督のTAOこと岡本多緒(40)は、16年に結婚した、スイス出身で編集者、クリエーターのテンジン・ワイルド氏との間の第1子を妊娠した身重の体で、レッドカーペットを歩いた。「やっぱり…命を授かるということは私にとって夢でもあったので、カンヌ映画祭の晴れ舞台で一緒に歩けるのは、すごいうれしいし、生まれてきたら自慢しなきゃなと思っています」と瞳を輝かせた。
「急に具合が悪くなる」は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者の宮野真生子氏と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者の磯野真穂氏が交わした20通の往復書簡を元にした、19年の同名共著(晶文社)を原作に、濱口監督が脚本を執筆。パリ郊外の介護施設の施設長マリー=ルー・フォンテーヌと、がんで闘病中の日本人演出家・森崎真理との交流を描く。マリー=ルーをエフィラ、真理を岡本多緒が演じた。
公式上映では、エンドロール中から大きな拍手と14分に及ぶ拍手喝采のスタンディングオベーションが置き、場内が明るくなった時には多くの観客からの声援が再びわき起こり、岡本も涙した。岡本は「見るのが2度目だったんですけど、気付いたら口角が上がっているというか、すごく温かい気持ちになりました。温かい拍手を長い時間、いただいて、今まで画面の向こう側で見ていたカンヌの様子が生でこんな感じたんだと。自分の中で、現実味がまだありませんが、高揚しております」と感想を語った。
公式上映には、エフィラと岡本のほか、真理が演出する舞台に出演する俳優の清宮吾朗役の長塚京三(80)吾朗の孫の窪寺智樹を演じた黒崎煌代(24)も参加。黒崎は25年の前回に、フランス監督協会が主催し、カンヌ映画祭に併設して開催される独立部門・監督週間に初主演映画「見はらし世代」(団塚唯我監督)が出品されたのに続き、2年連続でカンヌ映画祭に参加し、レッドカーペットを歩いた。
◆「急に具合が悪くなる」 フランス、パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌ(ビルジニー・エフィラ)は、入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、日本人の演出家・森崎真理(岡本多緒)に出会い、がん闘病中の真理の描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、交流を始めた2人だったが、ある時、真理が「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、2人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。



