連載「ROAD TO レディースチャンピオン」の5回目は名勝負列伝で、昨年の優勝戦を見事逃げ切った水口由紀(42=滋賀)をプレイバック。12年前は主張することができなかったイン。2度目のチャンスを得たベテランは、台風による日程順延にも左右されることなく、自分のレースをして歓喜のゴールに飛び込んだ。

 「わたしも若くはないですから」。12年越しの逃げ切りVを果たした水口が、レース後に言った言葉だ。ここには万感の思いがこもっていた。

 29歳だった02年第15回大会、1号艇で優出したがインを岩崎芳美に奪われて逃げ切りを許し5着に惨敗した。41歳になって再び巡った優勝戦1号艇。前出の言葉には12年の間に水口が自ら研さんし積み上げてきたレーサーとしてのすべてが詰まっていた。台風の影響で優勝戦は1日延びたが「いい緊張感のまま臨めました」と、まったく動じなかった。トップスタートから逃げ切り圧勝。12年前につぶされてしまったプレッシャーは、みじんも感じさせなかった。

 今年は連覇を狙う立場。丸亀は3月のレース中に腰の突起部を骨折して、約1カ月休んで以来の参戦になる。水口は「Fも持ってしまって事故点が高いので。いつも通り、目の前のレースに全力を尽くします」と笑った。今大会も「いつも通り、平常心」での戦いになる。【中川純】