これまでファイナンシャルフェアプレー(以下FFP)の導入が及ぼしている影響を中心に、各クラブのファイナンス状況やその周辺の事象についてお話ししてきました。

そのような中、稀に見る大型補強で注目を集めているレアル・マドリード。W杯でも活躍したベルギー代表のアザールを中心にヨビッチ、メンディ、そして初の日本人プレーヤー久保建英(18)の獲得を次々に発表しました。

昨季の時点で発表されていたブラジル人選手ロドリゴとエデル・ミリトンも合わせると、すでにクラブ史上最高額となる3億ユーロ(約363億円)以上をつぎ込んでいる計算です。FFPのルールから行くと、支出が収入を上回ることは許されていないこともあり、事業単体ベースで見ると、3億ユーロ以上の選手売却益を確保しなければならないという状況にもあります。

豪華メンバーの中に加わった久保建英選手。そしてライバルチーム、バルセロナに加わった安部裕葵選手(20)。彼らが所属する、今まではあまり注目されなかった(?)、ビッグクラブのBチームの動向の注目度が上がるのは必然だと言えると思います。

先日Bチームの所属するリーグのスケジュールが発表されましたが、今回はその彼らの所属するリーグについて触れたいと思います。


現在スペインリーグは1部、2部(セグンダディビシオン)、2部B(セグンダディビシオンB・実質3部)、3部(同4部)という形になっており、2部までがプロリーグで2部B、3部がアマチュアリーグとなっています。

レアルのBチームであるカスティージャとバルサBが所属する2部Bは、合計80チームが所属しており、それが地域ごとに大きく4つに分かれてグループリングされています。

2019-20シーズンは、レアル・マドリード・カスティージャはグループ1に、バルサBはグループ3に振り分けられているため、基本的にはトップチームのような形でのリーグ戦で日本人選手同士の“クラシコ“が見られることは無いようです。各リーグの4位までに入った全16チームが昇格プレーオフに進出し、その上位4チームが2部に昇格します。一方、下位4チームは降格プレーオフがあり、2チームが自動降格となります。


スペインではBチームのクラシコは「エル・ミニ・クラシコ」と呼ばれています。では、初の日本人選手同士のエル・ミニ・クラシコが実現する可能性はどうでしょうか。

日本の天皇杯にあたるコパ・デル・レイは、リザーブチーム(Bチーム)の参加が認められていないため、対戦はなさそうです。実現するとすれば、昇格もしくは降格プレーオフになります(組み合わせに関して一部抽選が入るため、その結果次第にはなります)。

昇格争い・残留争いという絶対に勝利が求められる中で実現することを想像すると、トップチームの試合同等の盛り上がりを見せてもおかしくはありません。1990年以降の対戦成績を調べると、両チームがセグンダ(2部)に所属していた時に6度対戦しており、レアル・マドリード・カスティージャの4勝2敗という成績です。


当然ですが、伝統のエル・クラシコで日本人同士の対戦が見られるのは、両選手がトップチームに昇格するだけでなく、その試合での両選手の登録&出場が実現した場合になります。

ちなみに昨年はバルセロナにクロアチア代表のラキティッチが、レアル・マドリードにルカ・モドリッチが所属しており、クロアチアでは非常に大きな盛り上がりを見せたと聞きました。トニ・クロースとテア・シュテーゲンのドイツ対決、デンベレ&ユムティティとベンゼマ&バランのフランス対決など国際的な側面も見せるエル・クラシコで日本人対決が行われる際は、今までにないほどの大きな盛り上がりを見せることは間違いないでしょう。日本人として大きな期待をせずにはいられません。


次回は移籍市場の最新情報などを見ながらFFPとの関係性などチェックしたいと思います。【酒井浩之】

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)