つい先日、ドイツとのルーツをたどると1919年に広島高等師範学校のグラウンドで広島高等師範学校の生徒vsドイツ兵による試合が行われたという記録があるようで、これが初めての国際親善試合になるのではないかという記事を目にした。日本サッカー界で大きいのは、やはりデットマール・クラマー氏ではないでしょうか。4年後に迫った東京五輪への強化の一環として日本協会が西ドイツ(当時)から氏を招いたのが1960年。当時はW杯など夢のまた夢であった時代。1964年の東京五輪でベスト8入りを果たし、1968年のメキシコオリンピックでは銅メダル獲得しました。クラマー氏による代表強化に加え、指導者養成やユース世代の育成など、日本サッカーの礎が築かれました。

最初の親善試合から約100年、そしてクラマー氏から教えを受けて約80年、まさかW杯優勝経験国に、W杯の舞台で歴史的な勝利を収めることになるとは。今回も前回に続きFIFAワールドカップ(W杯)のスポンサーの部分を経済的な視点からのぞいてみたいと思います。


W杯での国際サッカー連盟(FIFA)の収入は約6000億円近くと言われています。そのうちの約50%が放映権収入とされており、3000億円近くになります。スポンサー料は約30%で2000億円弱、入場料が約10%で600億円前後というような内訳とされています。世界人口の約半数である35億人以上が観戦すると言われます。見る人・見たい人がいるから放映権に価値が生まれ、ビジネスが成り立つからその放映権を購入する人(企業)があって、それが結果的に35億人以上の観戦者数を生むのか、それとも興味関心のある人が多いから自然と放映権ビジネスが成り立ち、それだけの金額を生み出すのか・・・。


スポンサーは大きくFIFAパートナー、W杯スポンサー、リージョナルサポーターの3種に分けられます。FIFAパートナーは、FIFAが主催するすべての試合やイベントで広告の掲出や周辺ビジネスができる権利が与えられるもので6枠~7枠のみのようです。1業種1社しか契約できない狭き厳選されたパートナーで、契約料は年間で約20億円~50億円近くとされており、総額で数百億円規模になります。アディダスやコカコーラは1970年台から長きにわたって支えています。


これに次ぐカテゴリーはW杯スポンサー。契約期間中に行われるW杯に直接関わることが出来るスポンサーとしての権利が与えられ、金額は年間10億円から25億円近くと言われており、マクドナルドやバドワイザーがこのカテゴリーのスポンサーになります。

リージョナルサポーターは年間5億円から10億円の契約金とされており、ヨーロッパ、北米、南米、中東、アジア(中東以外)の5つの地域におけるチケットの優先的配分や所在地域におけるブランド広告権が与えられます。

日本の企業としては(2007年から)2014年ブラジル大会までソニーがFIFAパートナーとして支えていたのですが、契約終了ということでスポンサーを降りました。色々な噂がありますが、汚職疑惑によるイメージダウンを避けたと言われてもいます。エミレーツ航空やジョンソン&ジョンソン、カストロールなども同理由で撤退しましたが、まさに欧米企業の経済的体力が低下していることの影響も顕著です。その分、新興勢力としてアジア企業が台頭。FIFAパートナーとW杯パートナー全14社のうち、中国企業と、韓国、インド、シンガポールのアジア企業で7社を占めます。

中国が巨額の国家資金を盾に、W杯開催をもくろんでいるという話があったり、複数開催国、参加国数の増加などによる新たな展開でスポンサー数を増加させるという話があったり、お金に関わる話が何かと多い世界的なイベントです。FIFAは収支報告書には説明できない買収資金や賄賂にあたるものが含まれていると、かねてより問題視されてきました。金銭の流れにおけるマネーロンダリング疑惑も存在するなか開催地投票における票の買収疑惑、テレビ放映権をめぐる贈収賄疑惑で逮捕者が出るなどネガティブなことも多く、今後のガバナンス強化が求められます。

世界経済の動向にダイレクトに影響を受ける世界でもあり、今後の動きに注目していきたいと思います。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)