元日本代表FWで日刊スポーツ評論家の永島昭浩氏(56)が、国立競技場で生観戦し、両軍の奮闘をたたえた。ガンバ大阪の前身松下電器時代の90年度に、同氏は天皇杯制覇を経験。一発勝負ならではの駆け引きに注目した。

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まずは新年を迎え、みなさんのご健勝を心よりお祈り申し上げます。今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

第100回大会を迎えた天皇杯は今回、最後まで目が離せない好勝負になった。最も印象に残ったのは、今季のJ1リーグ戦で最多勝ち点など多くの記録を樹立して最強と呼ばれた王者川崎フロンターレでさえ、後半途中からは受け身に回ったこと。

リーグ戦だと1点リードでも2点目、3点目を狙いにいった王者だが、勝負に徹して1点を守りにいった。鬼木監督は現役を引退する中村をピッチに送りたかったはずだが、逃げ切る展開では起用しなかった。こちらも勝負にこだわった采配だったといえる。

前半から攻撃の回数で圧倒し、G大阪のスタミナを消耗させたのが、後半10分の先制点につながったといえる。どの選手も1つ先のプレーを予見しているから、この日、得点した三笘のようにゴール前にタイミングよく進入できるのだろう。自軍で球を保持している際のチーム全体のポジショニングもいい。

G大阪は昨年11月の対戦で、川崎Fに0-5で大敗した試合を分析した結果、自陣で守備を優先するリアクションサッカーを選んだ。これは川崎Fが最後に守備を優先したように、勝負に徹する意味では当然あっていい。最後の猛攻では、同点を期待させる場面をつくって意地を示せた。

新型コロナウイルスの影響で、人数制限が設けられて観客動員は1万3318人だった。それでも手拍子や拍手による応援は、見やすいスタジアムの設計に加えて聴覚的にも非常に心地よかった。東京オリンピック(五輪)でも許せる限りの観客が入り、多くの人が観戦できることを願っています。(日刊スポーツ評論家)