ゴールを決め駆けだす仙台MF梁(2019年3月13日撮影)
ゴールを決め駆けだす仙台MF梁(2019年3月13日撮影)

若手の登竜門であるルヴァン杯でJ1ベガルタ仙台のレジェンドMF梁勇基(37)が光り輝いた。昨季は、ルーキーイヤーから14年連続で積み重ねてきたゴールがゼロに終わっていただけに、うれしい復活弾となった。ホームで行われたFC東京戦の前半16分、ボールハンターのMF富田晋伍(32)が高い位置で奪取したスルーパスに反応。冷静に右足で押し込み、今季初ゴールで貴重な先制点を奪った。試合後、「シンゴからパスが出た時点でシュートまでのイメージができていた。皆さんが若手選手しか取り上げてくれないので、たまにはおっさんが頑張ってもいいんじゃないかなって思います」と集まった報道陣を笑わせた。32歳がアシストし37歳がゴール。仙台の「おっさん」選手たちが輝きを放っている。

リーグ戦の第2節横浜F・マリノス戦で先発メンバーの平均年齢が30歳を上回った。横浜は北海道コンサドーレ札幌に次いで若い25・1歳で、30・2歳の仙台がJ118チーム中で最高齢チームとなった。世界最年長プロサッカー選手として記録を更新し続ける53歳のキングカズが在籍するJ2横浜FCが第2節のモンティディオ山形戦で記録したチーム平均年齢とほぼ同じだった。

元日本代表FWで、現在は仙台でコーディネーターを務める平瀬智行氏(41)は選手寿命が延びている状況を解説してくれた。「今の選手は、おおらかだった昔の選手に比べてお酒もたしなむ程度だし、自己管理能力が優れていて体のケアも半端ない。練習環境も格段によくなっているし、医療技術も大きく発展していることもありますが、僕たちの現役時代に比べ、プロ意識の高まりはものすごいものがある。第一線で長くサッカーを続けられる選手が増えても不思議じゃありませんよ」。

仙台のチーム平均年齢はJ2に降格した04年に最年少の24・9歳をマークしたのを最後に、増加の一途をたどってきた。新加入のMF兵藤慎剛は33歳で、若手主体に移行しつつある札幌から新たな活躍の場を求めての決断だった。「サッカーは選手寿命が比較的短いので、年齢を重ねると(クラブに)見限られてしまうところも多少なりともありますが、上の立場の選手たちが反発してまだまだやれるという姿を示していきたい。ひと昔前だと、この年齢(33)だったら引退しているのが当たり前でしたが、今は食事のとり方だったり、体のケアの仕方だったり、自己管理能力が格段に上がって寿命が延びていると思うし、先輩選手たちがそういう取り組みを通して実証してくれている。若手の選手たちもそれを上回る可能性を見せないとポジションは取れないし、年齢に関係なくチャレンジして自分の可能性を広げていきたい」と話した。

プロ15年目のベテランDF平岡康裕(32)は、仙台4年目で堂々と最終ラインの一角を担い、81試合で先発フル出場を果たしている。今春の沖縄糸満キャンプでは、11年に清水エスパルスでともにプレーした、元日本代表で沖縄SVの代表兼選手を務めるFW高原直泰氏(39)と再会し「要所要所のうまさは健在でした。タカさんのような上の人が、サッカーは年齢じゃないことを示してくれている」と、無形のパワーをもらった。

チームは開幕からリーグ戦1分け3敗と最下位に転落した。それでも、杞憂はしていない。経験豊富なベテランと、ルヴァン杯で存在感を示した若手が融合する、その下地はできている。

仙台新加入MF兵働
仙台新加入MF兵働