「こんなに素直でまじめなブラジル人に初めて会った」。

みんながそう口をそろえるのは、今季北海道コンサドーレ札幌に加入したFWドウグラス・オリヴェイラ(25)のことだ。愛称は「ドド」。彼の存在はチームで大きくなりつつある。リーグ戦19試合目の出場となった24日ホーム横浜FC戦、念願の初ゴールを決めた。努力の成果が出た1発。そんな彼の愛くるしい面を紹介したい。

初来日した2月はペトロビッチ監督の複雑な戦術に苦戦していた。開幕戦はベンチ外。それからアピールを続けた。現在は流れを変える時の切り札として、途中出場で出番を得ている。決して技術的というタイプではない。だがその分、攻守で懸命に走るプレーは評価されている。

ピッチ外でも常に全力だ。3月。マスクを2枚重ねで装着していた。理由を聞けば「2枚していれば、コロナを予防できると信じている」と真剣に語る。こまめに手指の消毒もしていた。外国人にとって縁遠かったマスクも受け入れ、日本人以上にコロナへの予防意識は高かった。

練習前後には、カメラに気づくと笑顔でポーズを決めてくれる。私はその写真を本人に送っている。毎回必ず届くお礼のメッセージは「Arigato(oは長音記号つき)」。私が「See you tomorrow」と送ると「Mata ashita(また明日)」と来た。かわいい。翻訳ツールを駆使して日本語で返信しようという姿勢が伝わる。日本語を勉強中で、練習中によく使うフレーズは「オサキニドウゾ(お先にどうぞ)」。日本で成功するため、順応しようとしているのだ。

練習中、チームメート同士で意見がぶつかり雰囲気が悪くなった時があった。その両者の間に立ち、心配そうに仲介役を買っていたのはドド。言葉が通じなくても、何かしたいという思いだったのだろう。

札幌で00年からポルトガル語通訳として多くのブラジル人選手のサポートをしてきた鈴木ウリセス通訳(39)は「日本人以上にまじめ。ルールや時間を守るし、礼儀正しく謙虚」とうなずく。札幌の野々村社長が「ドドは頑張れるブラジル人」と評価するのも、よくわかる。天才型というより努力型。思わず応援したくなる選手だ。【保坂果那】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)