浦和が16日の仙台戦で、理想の攻撃サッカーを結果に結び付ける。ミハイロ・ペトロビッチ監督(58)は15日の前日会見で「決して簡単なゲームにはならない。相手は守備的に戦う中で、カウンターを狙ってくる」とコメント。堅守の相手をどう崩すかを、試合のポイントと位置付けた。

 「我慢をしながら、丁寧にボールを動かしていくことと、リスク管理をしっかりすることが求められる。ただ、ここ最近は守りを固める相手に対して、自分たちの目指すサッカーがきちんとできていると感じている」。

 直近のリーグ戦、ACL合わせて6戦負けなし。ペトロビッチ監督就任以来、ホームで勝っていなかった甲府に勝つなど、守りを固める相手もしっかりと攻略してきた。

 前節10日の横浜戦はスコアレスドロー。しかし相手にCKの機会を1度も与えず、自陣でのファウルも90分間でわずか3回。19回のファウルは、半分以上が相手ゴールから30メートル付近だった。

 これは攻守の早い切り替えが徹底され、ボールを取られてから最初の守備機会が、敵陣深くで行われていることを示している。

 横浜は昨季、浦和を前線からの組織的プレスで圧倒し、0-4と完勝した。今回も同様の戦術を取ると予想されたが、そうはいかなかった。

 MF中村俊輔は「浦和はボランチの阿部、柏木の圧力が強いので、うちがボールを回している間に、最終ラインが下げられてしまう。どうしても前線の選手が孤立するので、ボールを取られた瞬間に前から組織的なプレスに行くのは無理」と振り返っていた。

 ボールを高い位置で奪えるチャンスが多くなり、決定機が増やせるだけではない。相手の重心を下げさせ、カウンターによるピンチの芽を未然につんでいる。

 今季リーグ戦通算4失点は、鹿島に次ぐ2番目の少なさだ。ペトロビッチ監督も「自陣にブロックをつくって守ることが守備、というのは過去の話。我々は攻撃をしながら、同時に相手陣内で守備をする」とうなずく。

 「我々の守備は、相手陣内で非常によく機能している。横浜がCK、FKがほしくなかったかと言えば、そうではなかったはず。守ってカウンターだけを狙っていたとは思わない。我々の戦い方が横浜のサッカーをさせなかったというのが、私の見方」。

 ただ、横浜相手に勝ちきることができなかったのも確か。ペトロビッチ監督は「唯一足りなかったのはゴールだけ」と首を振る。観客を魅了する組織的、攻撃的サッカーの価値を確立するためにも、どうしても結果がほしい。

 ペトロビッチ体制5年目。敵陣に相手を完全に押し込む理想のサッカーは、完成に近づきつつある。それがタイトル奪取につながるかどうか。

 敵地である上に、主力の多くをケガで欠く仙台が、思い切って守備を固める可能性は高い。上位対決以上に、浦和にとっての「試金石」になりうる一戦だ。