J3藤枝MYFCは12月2日の最終節アウェー・ガイナーレ鳥取戦を残し、15位と低迷している。序盤から勝利に恵まれず、7月末に石崎信弘監督(60)が就任。苦しい戦いは続いているが、J1、J2、JFLのクラブを渡り歩いてきた指揮官は、初めて率いるJ3クラブで、来季を見据えたチーム作りを着々と進めている。

寒空の中、ロッカールームもない大井川の河川敷に、藤枝の選手たちの声が響いた。午前中は約1時間の短い練習で、試合さながらの激しいプレスや競り合いを繰り返した。その様子は、石崎監督のスタイル=「全員でハードワーク」の浸透を感じさせた。

藤枝は、昨季は7位だったが、今季は序盤から成績が振るわず、監督を交代。監督歴24年の石崎氏を迎えた。新指揮官は、すぐに2つのテーマを掲げた。(1)高いポゼッションに対してシュート数が少ない状況の打破(2)守備の整備。これを実現するには、運動量と技術力の向上が不可欠で、シーズン中にもかかわらず、定期的な2部練習制を導入した。クラブとしては、人工芝の専用練習場を有しているが、どちらかは大井川河川敷運動公園や、藤枝市民グラウンドなど、天然芝の練習場を転々としている。石崎監督が「選手のケガ予防」を求めたからだ。

練習は、主に試合形式で、石崎監督が攻守を総合した形での指導を重ねている。フィジカルコンタクトも多く、主将の浅田大樹(29)は「うわさ通り厳しい練習ですが、最近では体が動けるようになり、相手に走り勝てるようになってきました」。就任後の戦績は4勝1分け9敗だが、前節では、J2昇格を狙っていた3位ザスパクサツ群馬に1-0で競り勝つなど、成果も出始めている。

だが、本当の勝負は来季であり、石崎監督は言った。「やりたいのは、攻守の切り替えが早く、アグレッシブにアクションしていくサッカー。意識はできているので、ボールを奪い切る、攻め切るといった形を作っていきます」。藤枝は来年、クラブ創立10周年を迎える。今季まいた種が、記念の年に咲かせられるかに注目だ。【和田憲明】