サガン鳥栖の元スペイン代表FWフェルナンドトーレス(35)が現役生活に別れを告げた。W杯など代表で盟友だったMFイニエスタ、FWビジャが所属するヴィッセル神戸と対戦し、1-6の大敗。この試合で現役引退を表明していた英雄は、不発に終わったが本拠地では今季最多2万3055人の前でフル出場して完全燃焼した。昨夏から2季でJ通算35試合5得点だった。イニエスタは惜別のゴールを決めるなど3点に絡んだ。

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鳥栖フェルナンドトーレスは、試合後の引退セレモニーで胴上げされ、背番号と同じ9回宙に舞った。あいさつ後には、大観衆の熱いエールを深く胸に刻み込みながら場内を1周した。

「自分はいい時も悪い時も諦めずにやることしか知らない。常に1日1日、必ず良くなるように努力を惜しまない姿勢で最後までやり抜けた」

開始前、神戸イニエスタとキャプテンマークを巻いた男同士抱きあい、闘志をみなぎらせた。「ビジャとイニエスタと一緒にいた時は泣きそうになった」。後半18分や同ロスタイム2分に左足で強烈なシュートを放った。無得点に終わり、今季ワースト6失点の大敗を喫したが、今季初の2万人超えの大観衆の前で完全燃焼した。

神戸戦はJ1残留を争う下位対決だったが、7月に発売されたチケットは即完売。10年W杯優勝メンバーのフェルナンドトーレスに加え、イニエスタ、ビジャも集う世界が注目した一戦。試合後は神戸サポーターも残り、会場全体が別れを惜しんだ。

推定年俸約8億円の英雄は、来季も1年のオプション契約を残していた。だが「精神的にも身体的にもピークのレベルには到達できない」との理由から、約2カ月前に引退を表明。今後は鳥栖のアドバイザーに就任する。

「(日本には)人やそれ以外に対して敬う心がある。日本からまだ学び続けたいことがある」と感謝した上で、Jリーグには「クラブも含めて歴史が浅い。良くなる要素は多い。選手個人の質は高いが、チームとして機能するには時間がかかる」と提言した。スーパースターは、第2の“神の子”発掘に尽力し、日本に恩返しする。【菊川光一】