Jリーグの選手で初めて新型コロナウイルスの感染者を出してしまったヴィッセル神戸。クラブとしては感染予防や拡大防止を、業界では先頭に立って呼びかけてきた。選手には手洗いなどの習慣化を呼びかけ、厳しく実行してきた。それだけに、あまりにも残念な結果となってしまった。

クラブは、2月23日の横浜FCとのJ1開幕戦では、来場者に歌や肩組などの応援行為、また応援道具(旗、鳴り物、メガホンなど)の持ち込みは禁止した。当時は厳しいルールという声があがったのは事実だが、今では当然の措置ともいえる。クラブは楽天本社と細かい打ち合わせを行い、他クラブと比べても細かいルール設定をした。

国内でウイルスの感染拡大の兆候が見られたため、3月8日までの一定期間は取材も禁止し、完全非公開で練習を実施した。9日以降は練習場に立ち入る記者も、検温した上で署名する必要があった。マスク着用を必須とし、取材時は2メートルの距離を保つようにしていた。個別取材も基本的には屋外だった。密集になることを避け、リスクを減らした。

さらに感染拡大により休校になった子どもたちへ、クラブは動画配信を先駆けて始めた。酒井も子どもたちのためにサッカーを始めたきっかけを話すなど、熱いメッセージを送った。14、18年W杯に連続で出場した元日本代表は、チーム内外で抜群の存在感を示していた。

感染経路は現時点で不明で、本人は「本当に申し訳ございません」と深く謝罪している。クラブ関係者は「他クラブより厳しい基準でチーム運営をしてきたつもりだが、結果は重く受け止めなければならない」と痛恨の思いを口にした。当面は大半の職員も在宅勤務になる。神戸や酒井の一連の取り組みを取材してきた記者としても、これ以上の感染拡大がないことを願いたい。

【編集委員=横田和幸】