手倉森ベガルタが執念の開幕ドロー決着を見せた。2011年の東日本大震災から10年を迎える今季。広島との開幕戦は前半から数的不利の劣勢。ロスタイム直前の後半45分、その3分前から途中出場のFW赤崎秀平(29)が同点ゴールを決め、1-1で勝ち点1をつかみ、開幕戦7年連続無敗(4勝3分け)を継続した。仙台に8季ぶりに復帰し、11年4位、12年2位に導いた手倉森誠監督(53)が、13年12月22日の天皇杯東京戦以来2624日ぶりにタクトを振った。

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手倉森マジックで大ピンチを乗り越えた。前半27分、センターバック(CB)のDFシマオ・マテが相手の決定機阻止で一発退場。残り63分、10人での戦いを余儀なくされた。それでもボランチのMF吉野をCBに配置変更し、交代枠5人を使い切るなど柔軟に対応。GKスウォビィクを中心に追加点を与えず、踏ん張った。1トップもFW皆川、MFマルティノス、赤崎と入れ替え、最後の赤崎が殊勲弾をもたらした。

手倉森監督は「シマオ(マテ)が退場して数的不利、ビハインドになって、追加点を与えず、チームにはこのゲームは勝ち点1を持ち帰れば御の字だと話して、いい時間での同点ゴールだった。特に関口はめまぐるしくポジションが変わる中で徹底してくれた。(赤崎)秀平の短い時間での出場で追いつけたのも仙台の今年の可能性は示せた」と手応えをにじませた。

震災の年、11年3月5日の開幕戦もアウェー広島戦で同じドロー決着だった。その6日後に未曾有の大地震が発生した。震災後リーグ再開初戦となった同4月23日、アウェー川崎F戦で劇的勝利を飾ると、12戦無敗と勢いに乗り、この年は4位でフィニッシュ。被災地を勇気づける「希望の光」となった。

指揮官は試合前ミーティングで「『10年目の年の希望の光スタート』と話し、震災で亡くなった方の苦しさを思えばピッチ内で起こる苦しさなんて何のことはない。苦しむ覚悟で戦え」と送り出し、1人1人が諦めない姿勢を貫き、勝ち点につなげた。次節はホームで6日に王者川崎Fと対戦。ホーム、アウェーの違いもあるが、11年と同じ広島、川崎Fとの連戦だ。昨季17位から「希望の光」へ-。無敵の相手を倒して躍進の礎を築く。【山田愛斗】