J1首位を快走する川崎フロンターレに、22歳のシンデレラボーイがいる。14日のアビスパ福岡戦でゴールを決めたFW遠野大弥は、アマチュアを経由して、今季J1王者にたどり着いた。

静岡の名門、藤枝明誠を卒業後、17年にJFL(4部相当)のホンダFCに入団した。「大学に進学するつもりだったけど、高校サッカー選手権(静岡県大会)の準決勝をホンダさんが見てくれて、声をかけてもらった。アマチュア最強クラブなので、そこで自分を磨ければと思った」。働きながらサッカーをする道を選んだ。

入団当初は、プロへのステップアップなど、視野に入っていなかったという。転機は3年目の19年。天皇杯で札幌、徳島、浦和とJクラブを下してベスト8入りし、ホンダ旋風を巻き起こしたことだった。「プロのチームとやることで、自分はもっともっとできるんだと思って、プロを目指すことを決めた」と、自身の可能性に挑戦することを決めた。

川崎F移籍初年度は、いきなり福岡に期限付き移籍した。プロ初挑戦だったが指揮官の信頼を得ると、41試合11得点でチームの得点王に輝いた。J1昇格の立役者となり、「できすぎかなと思ったシーズン。昇格も経験させてもらって自信につながった」と、満を持してJ1王者に合流した。

そして、古巣戦でゴールを決めた。「古巣とか、こういうことをあまり経験してこなかったので。(福岡は)手ごわくて、本当に不思議な感じがしたけど、ここで成長をアビスパサポーターに見せられたのかな」。スタジアムの一角に陣取った福岡のサポーターへ、思いをはせた。

実力でカテゴリーの階段を駆け上がった遠野はまだ22歳で、東京五輪世代でもある。ここからの活躍次第では、アマチュア出身の五輪代表が誕生…なんてシンデレラストーリーがあるかもしれない。【杉山理紗】