3月にブラジル代表に初選出されたレアル・マドリードFWビニシウス(18)が22日に東京都内でガガミラノ(GaGa MILANO)のイベントに出席し、日刊スポーツの取材に応じ、Rマドリードでのデビューシーズンから、生い立ち、来年に迫った東京オリンピック(五輪)やJ1のFC東京に所属するMF久保建英(17)について語った。(取材・構成=上原健作)

   ◇   ◇   ◇

ビニシウスは16歳の17年5月、Rマドリードに移籍金4500万ユーロ(約56億3000万円)という破格の金額で移籍した。国際サッカー連盟(FIFA)の規定により、18歳にならなければ移籍できないため、10歳から所属しているブラジルのフラメンゴでプレーを続け、18歳になった今季から満を持して“白い巨人”に加入した。

移籍1シーズン目の今季、いきなりリーグ戦18試合に出場して2得点。比較的多くの出場機会を得た。「個人的には、わりと自分の中ではスムーズに文化的にも、ヨーロッパのサッカーにも最終的には慣れることができた。成長できた1年だった」と手応えを口にした。

世界最高峰のクラブでいきなり輝きを放った18歳は、4歳から本格的にサッカーを始めた。

「純粋にサッカーが好きだった。もちろん、ストリート・サッカーからだよ」。多くのブラジル代表選手が歩んだ道と同じようにスタートした。フットサルなどで技術を磨き、10歳の時に名門フラメンゴの下部組織に入団。プロになれると思ったのは16歳の時だったという。「(20歳以下のブラジルで一番大きな大会といわれる)コパ・サンパウロに16歳でプレーした時にプロになれると思ったよ」。4歳上の選手を相手に活躍して左FWの大会ベスト選手を受賞。同年(17年)の5月にプロ契約を結んで夢を実現させた。

ここからは誰もが予想しなかった展開になる。5月13日にプロデビューを果たすと、わずか10日後にフラメンゴと22年まで契約を延長。移籍金は4500万ユーロに引き上げられたが、すぐさまレアルマドリードが接触。契約延長日にRマドリードへの移籍が発表される異例ずくめの移籍劇となった。

18歳になるまではRマドリードでプレーできないため、フラメンゴに残留。リーグ戦37試合で7得点。周囲の期待が大きすぎたのか、思ったよりも結果を出せなかった。苦しい時期は「人格をしっかりと持つこと」を心がけ、周囲の批判に臆することなく、自分を信じ抜いてプロでの壁を突破した。

苦しい時は、元NBAのスーパースターの名言を思い出すという。「個人的に影響を受けたのがマイケル・ジョーダン。『恐怖というのは幻想にすぎない』。恐怖は存在しないというジョーダンの名言を座右の銘にして、いつも頑張っている」と話した。また、プレーする時に大事にしていることは「自分の考え方やあり方という部分と、技術の両方だね」と言った。その中でも「特に、あり方という部分を大事にしている。恐れを抱かず、良いプレーをすることを心がけている」と、自身が3歳の時に現役を引退した選手の言葉を今でも大事にしている。

Rマドリードという世界最大のクラブでは、18歳とはいえ、良いプレーができなければ大きな批判を受ける最も過酷な場所。批判がなくてもプレッシャーを受ける。サッカーを離れた時のリフレッシュ方法について「テレビゲーム」と、18歳の若者らしく笑いながら答えた。その他には「友人や仲のいい親戚と楽しく過ごすこと」だという。大事なのは「サッカーを忘れて過ごすこと」だと話した。

来年に迫った東京五輪では金メダルを狙うとはっきりと言い切った。「もちろん、東京に帰ってきたい」と五輪出場を望んでいる。「ブラジルにとって五輪は非常に大事であるにもかかわらず、今まで金メダルを1回しか取っていない。今までで一番強いチームとして(東京五輪に)乗り込んで、金メダルを取りたい」。と意欲を口にした

東京五輪で戦う可能性があるFC東京のMF久保建英にも言及し、絶賛した。久保が飛躍した今季のプレーを動画でチェックすると、第一声が「めっちゃ、うまいね」。そのまま、映像にくぎ付け。その後も続くプレーを見て「すごく頭の良い、頭の回転が速い選手という印象。非常にクオリティーの高い選手だと、すぐに感じた」と称賛した。下部組織に在籍していたバルセロナへの復帰の可能性もある久保に「できるだけ早くスペインに戻ってきて、若い選手同士、スペインで一緒に活躍できたら良いね」と、早期のスペイン復帰を熱望した。

誰もがうらやむサクセス・ストーリーで超名門に入団したビニシウスは、サッカーをしていて一番うれしかった出来事について聞かれると「家族を助けることができたこと。家族の生活を楽にできたことだね」と笑顔で話した。初ゴールなど自身のことにはまったく触れず、家族愛を強調。家族のために努力して、プロになれたことを誇った。

一方で、一番つらかったことに関しては「特にないかな」とさらっと答え、結果の出ない苦しい時期でもつらくはなかったという。プロデビューからわずか2年。18歳ながら一家の大黒柱、そして将来的な世界のサッカー界の“大黒柱”としてプレーを続けることになるだろう。

◆ビニシウス 2000年7月12日、ブラジル・サンゴンサロ生まれ。10歳の時に同国の名門フラメンゴの下部組織に入団。16歳の17年5月にプロ契約。直後にRマドリードへの移籍が発表された。19年3月の国際Aマッチで初めてブラジル代表のメンバーに招集されたが、右足首の負傷により辞退。176センチ、62キロ。