今回の「ハナことば」は、私自身の最近のことを書きたいと思う。
1月20日、結婚式を京都で挙げさせていただいたことを読者の皆様にお伝えしたい。ミセスになった。
実際、この私が「結婚したい!」そう思えたのもとても奇跡的なことだと改めて感じている。「結婚する人はビビッと感じるよ」とか、「出会った瞬間にこの人だってわかるよ」とか、よく聞いていた。しかし自分にそんなことが起こるのか、あまり信じられない感覚だった。
2012年ロンドンオリンピック後に競泳から引退して、早稲田大学の修士課程に通い、2014年には順天堂大学の博士課程に通った。その間、非常勤講師をしたり、他にも多くの仕事をさせてもらっていた。選手引退後、セカンドキャリアに積極的に取り組んできた。キャリアと結婚はまた別だとは思うが、私の場合、両方を同時進行させるのは難しいと感じていた。
心のどこかに「自分の人生は自分で確立する」という気持ちが強くあった。女性の幸せは何なのか。さまざまな場所で女性に特化した議論がされ、私自身も「女性のカラダ」について執筆している中で、結婚は少しぜいたくなものだと思っていた。
セカンドキャリアがとても重要なものと感じていた私には、キャリアと結婚を同時に考える余裕がなかったのだ。
友達と食事に行けば、バリバリキャリアを積んでめちゃくちゃかっこいい女性が多くいた。そんなことも影響した。キャリアはすごく大事。でも結婚したい。働く女性の悩みとはこんなものかなと考えていた。
現代は、選択の自由がありながら、さまざまなジレンマで悩んでいる女性たちは多くいる。
私はそんな悩みを聞きながら、自身に置き換えて考えていたが、あまりピンとこなかったりもした。毎日楽しいし、日々の仕事もやりがいがあり、仲間もいて充実していたということもあった。
博士号を無事取得し、一息ついて仕事にまい進していたころ、現在の夫となる男性と出会った。最初は仕事を一緒にしているだけの感覚だった。ところが、少しずつ時間を重ねていくうち「この人と一緒にいたら自分らしくいられるのでは?」と感じるようになっていった。まだ交際前のことだ。
ずっと決めていたことがあった。
「自分らしくありのままでいられる人に出会ったら結婚したいな」
こんな曖昧だが感覚的なものがあって、この感覚になれたのが現在の夫だ。「ビビッ」ではないが、私なりの感覚だ。
夫もスポーツ関係の仕事をし、経営などの専門知識も豊富で、頼りになる存在だ。
女性が結婚を決める大変さはきっとある。特にキャリアも考えると。もちろん男性にとっても、意味は異なるかもしれないが大変なことだろう。
京都での神前式。「着物が重いですね」と着付け師のかたに言うと、「お嫁に行く重さなんですよ」。帯1つ1つの意味も教えてくれた。昔の人のお嫁に行く覚悟がどのようなものだったのかを少しでも知ることができた。
日本の心は奥ゆかしく、深く、繊細だ。
最後は白無垢(むく)から色打ち掛けに。「嫁ぐ家の血が流れるという意味があります」。身が引き締まる思いだ。
日本の伝統と文化を感じ、未来へまた1歩進む覚悟ができた。
これから未来を生きる後輩たち、生まれてくる人たちに少しでも何かを残せたらと心から思えるきっかけを、結婚がくれた。
結婚の形は人それぞれ、人生の形も人それぞれだ。
私らしく、私たちらしく進んでいければと思う。
簡単ではありますが、結婚の報告とさせていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)