毎週日曜日掲載の「スポーツ×プログラミング教育」。今回は前回に続き、静岡・袋井市立浅羽北小学校での授業「タグラグビー×算数・プログラミング」の第2回です。プログラミングの授業では、AIソフトを使って勝つための作戦を立てました。シミュレーションと実技を繰り返すことで、よりリアルな戦略を児童たちは考えました。


タグラグビーの実技の授業を行う浅羽北小の児童たち
タグラグビーの実技の授業を行う浅羽北小の児童たち

3時間目 具体的なイメージを持ってプレー


児童たちの動きがラグビーになっていた。19年11月7日の3時間目はタグラグビーの実技だった。指導する7人制ラグビー元日本代表選手の石川安彦氏は「ここまでうまくなるとは思わなかった」。浅羽北小の花嶋芳久校長も「初日はみんなおどおどしていたけど、大変身ですね。いいパスが出ていて観戦したラグビーW杯の選手のようでした」。10月にエコパスタジアムで行われたラグビーW杯を5、6年生と観戦。そのスコットランド-ロシア戦を例に出して驚いた。

前日6日のボードゲームで俯瞰(ふかん)してプレーできるようになった。攻め手と守り手に分かれて実技で使いたい作戦を考えた。実技との違いもあげることでより具体的なイメージを持って臨んでいた。

タグラグビーの実技の授業を行う7人制ラグビー元日本代表の石川安彦氏(中央)
タグラグビーの実技の授業を行う7人制ラグビー元日本代表の石川安彦氏(中央)

今回は5対5まで人数を増やし、オフサイドなど新たなルールも追加した。まずは3対3を行い、チームごとに作戦が通用したか、話し合った。最大の5対5で戦略が難しくなっても学びをしっかりいかした。パスを展開してトライを決める場面が多くみられた。石川氏は「タグを取られるのを恐れず前にいくという正攻法をあえて伝えず、児童たちから自発的に出てくる気づきを大切にしました」と話した。


プログラミングの授業を受ける浅羽北小の児童たちと佐藤規之教諭(中央)
プログラミングの授業を受ける浅羽北小の児童たちと佐藤規之教諭(中央)

4時間目 8チームがタグラグビーAIソフトで対戦


11月8日の4時間目は、いよいよプログラミング。動きをシミュレーションできるタグラグビーAIソフト「プログラグビー」を使い、5対5のゲームで勝てる作戦を考える。

学年主任の佐藤規之教諭がこの目的を児童に伝え、6年生2クラスの計8チームによる最終決戦の構想を明かした。「ラグビーワールドカップのようにAsakita Cupを次回から行ってNO・1チームを決めます。AIソフトを使って各チーム別に作戦を考えましょう」。

児童には1人1個のタブレット端末。AIソフトは、碁盤の目のようなマスに攻め手の青丸と守り手の赤丸が5個ずつ配置されていた。AI同士で対戦させると、マスにある大きい数字へパスすることが分かる。

前田真李教諭は「数字の大きさは気持ちの強さで決まります。AIの動きは(1)前に行きたい気持ち(2)守り手からの距離が遠いほど良いという気持ち(3)守り手から距離が遠い人にパスしたいという気持ちで決まります」と説明した。

児童は、それぞれの気持ちを画面上で目盛り調整しながら、勝敗を予想。結果と比べて気づきを記入していく。最後には「全部の気持ちを最小にしたら勝てた」など、勝率が高い組み合わせが発表された。


タブレット端末を使い、プログラミングの授業に取り組む浅羽北小の児童たち
タブレット端末を使い、プログラミングの授業に取り組む浅羽北小の児童たち

5時間目 戦略会議で何度もシミュレーション


続く5時間目は戦略会議。チームごとにシミュレーション結果を持ち寄り、作戦を考えた。児童からは「仲間と協力してパスをすれば勝てる」「プログラミングで動きが分かった。次は勝てそう」などと手応えがうかがえた。

担当した佐藤教諭は「俯瞰する視点を持ってシミュレーションを繰り返すことで課題が見えます。解決する力になり、実生活での成功体験につながると思いました」。最後は実技のAsakita Cupを迎える。(つづく)


プログラミングの授業の後、チームに分かれて作戦会議を行う浅羽北小の児童たち
プログラミングの授業の後、チームに分かれて作戦会議を行う浅羽北小の児童たち

◆小学校でのプログラミング教育必修化 英語のように教科として増えるのではなく、既存科目に「導入」される。目的は3つで、<1>プログラミング的思考(目的やゴールから逆算し物事を順序立てて考え、結論を導き出し、実行すること)を育む<2>プログラミングの動きやよさに気づき、活用したり、その態度を育む<3>各教科等での学びを確実にする。2020年には約37万人のIT人材が不足するといわれ、幼少時からの育成が急務。21年からは中学校でも実施される。


◆タグラグビー ラグビーからコンタクトやキックプレーを除き、(ボール保持者の)腰につけた2本のタグを取り合いながら、トライを狙う。ボール保持者はタグを取られた時点でパスを行い、タグを返却されるまでプレーに参加できない。取った選手も手渡しで相手に返却するまでプレーに戻れない。


◆株式会社STEAM Sports Laboratory 2018年11月設立。山羽教文代表取締役。本社は東京都港区南青山。子どもたちの「主体的・対話的かつ深い学び」を引き出すために、スポーツシーンにおける問題・課題を教材にした「新たな学びの場」の創出を目指している。