昨年12月25日の全国高校駅伝から約1カ月が過ぎ、大阪薫英女学院の入り口にはお祝いのたくさんの花と優勝旗が飾られていた。

 チームを率いた安田功監督(55)は、14年に続く2回目の優勝を「今年のほうがより勝つ確率が高いな、かなりの可能性があるかなと思っていた」と振り返った。エース区間の1区は嵯峨山佳菜未(3年)が粘りの走りを見せ10位でタスキを渡すと、2区で高松智美ムセンビ(2年)が9人抜き。その後は1度も首位を譲らない快勝だった。

 「腹八分目と良く言うけど、練習は腹七分目」。安田監督のこの言葉が心に残った。

 安田監督は短距離の選手だった。現役時代は、練習を目いっぱい行っていた。しかし思うような結果が出ない。疲れから慢性疲労に、そしてたくさん練習をすること自体が目的となり、試合で結果を残すという本来の目的からずれてしまっていた。07年に大阪薫英女学院に来るまで、23年間公立中学校の陸上部を指導していたが、練習を多くしていた最初の頃は思うように結果が出なかった。

 「将来の目標よりも、その日をなんとか乗り切ろうと思ってしまうと、方向が変わってくる」。長い練習をなんとか耐えるために、力のペース配分をすることを安田監督は懸念する。本来の「鍛える」という目標から離れていくからだ。大阪薫英女学院の練習時間は朝1時間、夕方1時間半~2時間。短い時間でも全力で行う練習で「勝てるチーム」を作っている。「毎日が甲子園練習みたいなもんです」。私が新米の野球記者だと言うと、安田監督は優しく高校野球に例えてくれた。

 練習内容にもほぼ口を出さない。基本的な練習以外は選手がそれぞれ、自分の体調を考えて内容も量も決める。「選手が自分で考えること」を重要視する。

 「高校駅伝はもちろん最高の舞台。結果を出したいですけど、1番大事なことは生徒が卒業してから大学や実業団を経て、オリンピックや世界陸上を目指すような選手になること」。

 長く競技を続けてほしい、選手の未来を思うからこその「腹七分目」なのだと思った。【磯綾乃】

 ◆磯綾乃(いそ・あやの)1991年(平3)10月4日、埼玉・春日部市生まれ。早大ではカバディサークルに所属.14年4月に大阪本社へ入社。整理部を経て今年1月から野球部。

優勝を決めインタビューに答えるアンカーの竹内ひかり(左)と安田功監督
優勝を決めインタビューに答えるアンカーの竹内ひかり(左)と安田功監督
阪薫英女学院のメンバーは2年ぶりの優勝を決め、ゴールテープを手に笑顔を見せる、左から嵯峨山、高松智美ムセンビ、松尾、中島、竹内(撮影・奥田泰也)
阪薫英女学院のメンバーは2年ぶりの優勝を決め、ゴールテープを手に笑顔を見せる、左から嵯峨山、高松智美ムセンビ、松尾、中島、竹内(撮影・奥田泰也)