【バルセロナ10日=阿部健吾】真央先生、勇姿みせる-。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ上位6選手(組)で争うファイナルが開幕を迎え、女子で最多5勝目を目指す浅田真央(25=中京大)は9日に公式練習に臨んだ。シニアとジュニアの大会が同期間同会場で行われる大会。日本の若手選手からは先生役を期待される中、結果で応える。

 世界の強豪6人がそろった開幕前日の公式練習の観客席から、浅田に熱視線が送られていた。ジュニア(13~19歳)のファイナルに出場する女子3選手、14歳の白岩と本田、16歳の三原が、その一挙手一投足を逃すまいと目を皿にしていた。「感覚がフワフワするかと思ったけど、ギリギリまで体を動かしてきたので、いつもより体の動きは良かったかな」。直前まで日本で練習を積んできた手応えを感じながら滑る浅田の姿を、追っていた。

 今大会はシニアとジュニアが同日程で行われる。国際連盟主催大会では他になく、若手選手には貴重な勉強機会となる。三原が「浅田選手も羽生選手もピリピリした空気でやっていた。テレビでは見られない姿。しっかり学びたい」と話すように、それぞれが楽しみにする。そして、何よりもお目当ては浅田だ。10年前から世界の最前線で戦い続ける姿を、競技を始めたきっかけにする選手も多い。

 当人は年長選手の役割に「一番上として、自分のやるべきことをしっかり」と自覚的だ。入念なストレッチなど競技への打ち込み方が、自然と後輩の学びの場となっている。日本連盟の小林強化部長は「競技を続けてくれて、何よりのフィギュア界の財産」と期待。今大会も競技終了後の閉幕パーティーで日本代表が一緒に行動するため「若い子には積極的に質問するように言います」と話した。

 一夜明けたこの日の練習では、ジャンプの踏み切りを入念に確認した。2週間前のNHK杯では、ミスが続いて3位に終わった。順調だった復帰ロードが滞る結果だったが、「技術においてもスケートに対する気持ちにおいても、『もう1度あらためて見直しなさい』としてくれた試合だった」ととらえ、気持ちを新たに練習に励んできた。巻き返しにかけるその姿勢こそ、最高の教科書となる。