取材を続けていると、思わぬスポーツのつながりを感じさせられることがある。柔道の女子78キロ超級の山部佳苗(25)と競泳の鈴木聡美(25)。同じミキハウス所属だけでなく、山梨学院大の同級生でもある2人も、そうだった。

 体重無差別で争われ、リオデジャネイロ五輪78キロ超級代表最終選考会を兼ねた柔道の全日本女子選手権の前日会見が開かれた16日、記者会見に出席した山部はいの一番に鈴木の名前を出した。先週開催された競泳の日本選手権。その会場に足を運び、親友の雄姿を見守ったばかりだった。

 「一発勝負で決めた。決勝始まる前の入場から気合が入っていた。最初から攻めて、すごいなと」

 鈴木は12年ロンドン五輪で女子100メートルで銅メダル、200メートルで銀メダルを獲得し、日本競泳女子史上初となる五輪個人種目での複数メダルを獲得。しかし、その後は不振が続き、リオがかかる一発勝負の大一番にも決して、前評判が高かったわけではない。それが、目の前で、攻めに攻めて、100メートルの代表の座をつかんでみせた。それを見た。

 「最初の50メートルでガンガンいっていた。そういうのが足りないのかな。勇気を持っていた。すごく勉強になった」

 競技は違えど、積極性に関しては共通点を感じたという。だからこそ、リオ五輪切符がかかる最終選考会で、その刺激を体現したい。昨年の国際大会での結果などで、状況は厳しい。1番手の田知本愛に大きく水をあけられているのが現状。わずかな可能性を開くには、優勝だけでなく内容も問われる。

 「おめでとう」

 「私も応援しているからね」。

 鈴木への祝福メッセージの返信は、この大会へのエールだった。2年ぶり3度目の日本一の先に、まだ道は続くために、競技の垣根を越えた友情を力に変える。【阿部健吾】