違法カジノ店での賭博行為で無期限の試合出場停止処分から復帰したバドミントン男子の桃田賢斗(22=NTT東日本)が準決勝で武下利一(トナミ運輸)と対戦し、21-15、21-19の2-0で決勝進出を決めた。第1ゲームはリードを保ったまま先取したが、第2ゲームは14-14まで一進一退の展開。長いラリーも続いたが「強い気持ちで、1球1球辛抱強くプレーできた」と、最後に突き放した。勝利を決めると、感極まって「よし、よーし!」と、ガッツポーしながら雄たけびをあげた。31日の決勝は、上田拓馬(日本ユニシス)と対戦する。

 試合に向かう姿勢が変わった。お手本とするのは、ジュニア時代からともに戦ってきたリオデジャネイロ五輪女子シングルス銅メダリスト奥原希望(日本ユニシス)。奥原のストイックさ、コートの中のふるまいを「見習っていきたい」という。「昔の自分を思い返すと反省するところばかり。勝てばいい、この1点が取れればいい、と思っていた。今は本当に、コートに入れることに感謝している。1人じゃ試合も出来ない。対戦相手にも感謝していますし、審判の方、大会運営の方、毎日取り上げてくださっているメディアの方々、すべてのことに感謝してコートに入っている。その気持ちが1球の強さに変わっているのだと思います」。奥原が試合の際にコート内外に深くおじぎするように、桃田も四方へ深く礼をするようになった。

 1年2カ月のブランクを経ても、世界屈指といわれる技術は変わらない。だがそれに頼らず、必死に1球を追うプレーを求めていきたいという。「バドミントンは想像性が大事。でも、1点が必要な場面では、より自分の感情を殺して努力してきたほうが1点をつかみ取れるんじゃないかという気持ちが強い。見ている方にはつまらないというプレーでも、1点を取りにいきたい」。

 以前は、髪を染め、ネックレスや指輪をつけていたが、今は黒髪で装飾物も一切身につけていない。「前はかっこいいと思っていましたが、今は必要ない。理由は特にありません。誰に言われるでもなく、自分で付けるのをやめようと思いました」。飾らず、ひたむきに復活の道を歩む。