男子90キロ級でリオ五輪金メダルのベイカー茉秋(24=日本中央競馬会)が、五輪後、初の優勝を果たした。昨年4月に右肩を手術し、頂点から遠ざかったが、久々に表彰台の真ん中に立ち「リオが終わってから、つらいことばかりだったが、優勝して戻ってこられて良かった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

決勝は激戦だった。相手は学生王者の田嶋剛希(筑波大)。勢いに任せ攻めてくる相手に先にポイントを許した。流れを奪われそうになったが、「もう2位は嫌だ」と沸々と沸き上がる強い気持ちで心を奮い立たせ、大内刈りで技ありを取り、ゴールデン方式の延長に持ち込んだ。最後は意地だけ。小外掛けで技ありを奪い取って合わせ技1本で制した。

長いトンネルからようやく抜け出した。手術後、思うような結果が出ず苦しんだ。8月のジャカルタ・アジア大会でも準決勝で反則負け。3位決定戦で勝利し、銅メダルを手にしたが、復活を印象づけるにはほど遠かった。世界選手権は昨年、今年と2年連続でテレビで見た。五輪王者の寂しすぎる現実に「悔しかった」と振り返った。「やめようと思う自分もいた」と葛藤したが、アジア大会後、母校の東海大浦安高に練習に行った。打ち込みなど基本を重ね土台作りから始めた。「ハイレベルの戦いを続けるとその部分をやらなくなる。そこがあっての僕だったのでやり直した」と原点に返り、復活につなげた。

「戻ってきたとアピールできた」と話すように、五輪連覇へ、約2年を切った東京へ再出発した。グランドスラム大阪大会(23日開幕)に向け「この優勝でスタートラインに立ったなと思う。挑戦者の気持ちで挑みたい」。はい上がってきた五輪王者が、世界一への道を再び走りだした。