ショートプログラム(SP)5位と出遅れた紀平梨花(16=関大KFSC)がフリー155・01点、合計223・76点で2位に食い込んだ。 冒頭のトリプルアクセルと3回転トーループのコンビネーションジャンプを決め、続く単発のトリプルアクセルも成功させた。後半の連続ジャンプでミスはあったものの、全体をまとめてGPファイナル女王の力をみせた。

「トリプルアクセルを2本決められた。自分の120%を出せた。GPファイナルが終わってからの調子を見たら、どうしようかなと(悪い結果も)覚悟していたぐらい。フリーであの演技ができて良かった」。初優勝も見えたが最終演技者の坂本に逆転された。「カオちゃん(坂本花織)が頑張ったので頑張った人が優勝だと思った」。紀平は、すがすがしい笑顔を見せた。

ほろ苦い経験を経て、16歳はまた成長した。21日のSPでは使い込み、柔らかくなったスケート靴の調整に苦しんで代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を転倒。テープを巻いて繊細な感覚に気を配ったが「できるだけ、準備は完璧にしないといけないのが当たり前。うまく合わせていくことができなかった」と悔しげに振り返った。

会場の東和薬品ラクタブドーム(旧なみはやドーム)は思い出の舞台。小学校低学年の頃に全日本選手権を生観戦し、得点発表を待つ「キス・アンド・クライ」の真上の客席から憧れの浅田真央に「真央ちゃ~ん!」とさけんだ。「真央ちゃんみたいなトリプルアクセルを跳びたいです」。そうしたためた手紙を投げ込んだ記憶は鮮明にある。

4年前の14年にはグランプリ(GP)シリーズのNHK杯で、今度は「フラワーガール」役。観客席から投げ込まれる花束を集める係などを仲間と分担してこなし、間近で滑るトップスケーターに目を輝かせた過去がある。

兵庫・西宮市出身で、今季のシニア転向後、初めてとなる地元関西での大舞台。全日本選手権は2大会連続2度目で、初出場だった17年はジュニアながら平昌五輪代表を決めた宮原知子、坂本花織に続く3位だった。グランプリ(GP)ファイナルを制した女王として立った大舞台。不安要素を抱えながらも、最後まで力を出し尽くした。