女子78キロ超級で東京五輪代表を逃した18年世界女王の朝比奈沙羅(23=パーク24)が、12年ロンドン五輪金メダルのオルティス(キューバ)を破り、決勝に進出した。

完璧な一本勝ちだった。朝比奈は尊敬するオルティスの指導2を誘発し、終始試合を優位に進めた。これまであまり見られなかった内股などの足技もさえ、開始2分過ぎに隅落としで技ありを奪い、最後は押さえ込んだ。決勝は17年世界選手権銅メダルのキンドゼルスカ(アゼルバイジャン)と対戦する。

五輪代表争いでは、19年世界女王の素根輝(そね・あきら、19=環太平洋大)が、昨年11月のGS大阪大会を制し、大会直後に五輪代表に決まった。男女14階級で代表が決まったのは、女子78キロ超級のみだった。幼少期から文武両道を体現し、東京五輪金メダルと医師の2つの夢を追いかけてきたが、五輪の夢はかなわなかった。何度も気持ちが折れたが、「最後まで何があるか分からない。万が一、何かあった場合のために柔道の稽古は続ける」。目標を失いながらも必死に前を向いた。柔道を続ける上で、元世界女王としての意地を見せることが大きなモチベーションとなった。

「人生に後悔はない。『やっぱり、(五輪に)朝比奈を出しておけば良かった』と言ってもらえるぐらいになるのが今のゴール。最後は、自分自身へ人生の金メダルを与えられるぐらいの人になりたい」

今春から、もう1つの夢をかなえるために獨協医大医学部に進学する。23歳の柔道家の新たな人生がスタートする。