ジャパンパラ陸上最終日が8日、正田醤油スタジアム群馬で行われ、男子走り幅跳び(切断などT64)で義足の8メートルジャンパー、マルクス・レーム(29=ドイツ)が自らの記録を7センチ更新する8メートル47の世界新をマークした。「今日は1回目から感触が良かった。日本で更新できて良かったよ」。最終6回目の大ジャンプ。フィールドの掲示板に記録が点灯すると客席のどよめきは大歓声になり、レームは何度も両拳を握った。

 15年10月の世界選手権で8メートル40を跳んだ。リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)参加標準記録を25センチも上回って五輪出場を熱望したが、国際陸連は義足が有利に作用していない証明を要求し、願いはかなわなかった。12年のロンドン・パラを制した時は7メートル35。世界記録を挟んで16年リオでは8メートル21で連覇を果たした。ただ、レームが使う義足は12年当時と同じもの。記録の急伸は積み重ねた努力の結果と自信を持っている。「もっと五輪とパラリンピックが近いものになって、選手がお互いに競い合えれば素晴らしい」。リオ後も厚い壁を取り払うために折衝を続けている。

 8メートル47は健常者の記録でも今季世界3位に並ぶ。マイク・パウエル(米国)の91年に東京で樹立した世界記録8メートル95の更新に話が及ぶと「いつかはね。それが20年東京だったらいいね」とニッコリ笑った。【小堀泰男】

 ◆マルクス・レーム 1988年8月22日、ドイツ生まれ。14歳の時にウエークボードの事故で右膝下から切断。20歳から義足で陸上を始めた。14年のドイツ選手権では健常者の五輪経験者らを抑え、義足選手として初優勝。同大会は翌年の欧州選手権予選を兼ねていたが代表には選ばれなかった。義肢装具士の資格を持ち、仕事で障がい者を支えている。身長185センチ。