女子走り幅跳び(視覚障がいT11)で、17年ロンドン世界選手権銀メダリストの高田千明(34=ほけんの窓口)が自らの日本記録にあと1センチに迫る4メートル48の大会新をマークしたが、11月のドバイ世界選手権の派遣指定記録突破はならなかった。

最終6回目の試技。助走のスピードに乗ったジャンプはやや左側に流れたが、記録はこの日ベストの4メートル48だった。その瞬間、高田は「アッ、ギャ~ッ!」と、喜びよりは驚き、落胆のこもった奇妙な叫び声を上げた。

「あと3センチが届かない。神様が降りてきてくれないんですよ。もう、448の呪いです」。競技後、メディア関係者に囲まれると苦笑いで嘆き節を並べた。あと3センチ…。世界選手権へ日本パラ陸連が定めた派遣指定記録は4メートル51。世界レベルに合わせて日本記録を上回る設定になっているが、今回もこの壁を超えられなかった。

4メートル48が続いている。昨年10月のジャカタ・アジアパラでは1本目にこの記録を跳んで銀メダル。今年6月の日本選手権では6回の試技中3本でこの記録をマークした。「助走もしっかりしていて調子もよかったのに…。跳びたい気持ちが強くて、空中で体が前にいってしまって脚がついていかなかったですね~」。

ただ、16年のリオ・パラリンピック後、20年東京での金メダルを目標に助走のスピードアップや空中姿勢の改善に取り組んできた成果は確実に表れている。前回の世界選手権で日本記録を跳び、最近のコンスタントな成績もその証明だ。コーラーでコーチの大森盛一さん(46)も「目標にしている(4メートル)60から70は跳べる力がある。あとは条件とタイミングだけです」と心配はしていない。

残るチャンスは今月20、21日のジャパンパラ大会(岐阜)。世界選手権で4位以内に入れば東京の代表に“内定”するだけに、どうしても出場権をつかみたい。「もう、緊張で内臓が口から出ちゃいそうです。でも、頑張りま~す」。高田は周囲の爆笑を誘いながら「あと3センチ」の克服を誓った。【小堀泰男】