猛暑での大一番は大歓迎だ。東京パラリンピック男子マラソン(上肢障害T46)の出場資格を争う世界ランキングで2位の永田務(37=新潟陸協)が24日、オンライン取材に応じ、酷暑となる可能性のある本番でのレースについて「みんなが嫌がる気象条件を望んでいる。苦しんでなんぼ。ゾンビのようなレースを」。独特の表現で、金メダル獲得への意欲を示した。

パラ競技歴は浅いが、2月のびわ湖毎日マラソンで2時間25分23秒のアジア記録をたたき出した。陸上競技自体は中学時代から始め、高校卒業後は自衛官ランナーに。除隊後も長距離を走り続けたが、当時勤務先だった工場での事故で右腕に大けがを負った。

2年間で受けた手術は計10回。右腕全体が思うように動かなくなっても、「走ることをやめようとはまったく考えなかった。腕1本ぐらい、走ることには関係ない」。

思うように腕が振れずスピードが出ない。ならば、スタミナ勝負に活路を見いだした。100キロのウルトラマラソンなどで健常者にまじって活躍し、日本代表にも選出された。

昨年3月、パラ大会出場に必要な国際クラス分けを受けた。ところがコロナ禍により、東京パラリンピックの出場切符につながる大会が相次いで中止に。そうした中で、関係者の協力や運営者の尽力を受けて臨んだびわ湖毎日で結果を出し、一気に道が開けた。

インターネットのプロフィール欄には“自称日本一諦めの悪い男”との肩書きもあるように、どんなときも前向きな姿勢を失わない。「この腕で競技に不利になったとは思っていない。障がい者の強さを伝えられれば」。真夏の東京で、その強さを思う存分発揮する。【奥岡幹浩】