【新教養】早実に源流 日本一広い県らしい「野球は教わるもんじゃない」のリベラル観

アマチュア野球を担当していた当時に、佐々木朗希と出会った金子真仁記者。スケールの大きな選手が、岩手から立て続けに羽ばたく理由を解明しようと、さまざまな角度からアタックします。足繁く通い、ライフワークとなった取材に基づいて立てた新説。3回連載の第2話です。

その他野球

いったい全体、岩手県はどうなっているのか。スーパー野球選手の輩出が続くわ続くわ、止まらない。

ブルージェイズ菊池雄星投手(31)を皮切りに、もはや適切な形容詞さえ見つからないエンゼルス大谷翔平投手(28)が続き、ロッテ佐々木朗希投手(21)はプロ3年目の今季に完全試合を達成。今秋ドラフトでは盛岡中央・斎藤響介投手(3年)がオリックスに3位指名され、来年は花巻東の長距離砲・佐々木麟太郎内野手(2年)が大きな注目を集める。

なぜいきなり、岩手から続々と怪物クラスが。単なる偶然だ。以上。…いや、それじゃロマンがない。旅好きも重なって「なぜ岩手?」を継続的に取材し、早寝教育説などを発信してきた記者がまた1つ、取材成果を公開する。2人の野球人の2つのアクションが融合し、ゆっくりとながら、確かな化学反応を岩手球界に起こしていた。

雰囲気抜群で「キング・オブ・地方球場」に君臨する岩手県営野球場。1970年に開場した岩手野球の聖地だ。大谷翔平の花巻東時代、佐々木朗希は大船渡時代に160キロを計測し話題に。2012年にはオールスターも開催された。老朽化で閉場し、2023年4月に「いわて盛岡ボールパーク」が完成する予定

雰囲気抜群で「キング・オブ・地方球場」に君臨する岩手県営野球場。1970年に開場した岩手野球の聖地だ。大谷翔平の花巻東時代、佐々木朗希は大船渡時代に160キロを計測し話題に。2012年にはオールスターも開催された。老朽化で閉場し、2023年4月に「いわて盛岡ボールパーク」が完成する予定

来年3月閉場 岩手県営野球場のライト近辺

岩手県営野球場が、2023年3月末をもって閉場する。大谷翔平と佐々木朗希が160キロを投げたマウンドも、彼らを見るために仕事を辞めてまで早朝から連日並んだファンがいる聖地も、記憶の中のものとなる。

知られていない。知る術もなかった。「なぜ岩手?」の壮大なナゾトキは、この球場の右翼手のポジションあたりに原点がある。

定かではないが、証言を総合すると90年代後半のことだという。社会人野球・熊谷組の監督を務めていた清水隆一さん(現在63)が、盛岡を訪れた。「今でも続いているんですよ」と四半世紀前を懐かしむ。

ベースボールコーチクリニック。指導者講習会が岩手県営野球場で行われ、そうそうたるプロ野球OBたちに混じり、清水さんも講師として出席した。

球場にいる各々が投手、打撃、走塁…と専門的な部門に分かれる。清水さんの担当は、小中学生の基本パートだった。右翼の一角。「そこに下川先生たちのグループがいらしたのが、最初の出会いでしたね」。のちに岩手県内の中学3年生向けにKボールを活性化させ、ストライクゾーン拡大などで劇的に子どもたちの能力を伸ばした第一人者、下川恵司さん(現在63)との出会いだった。

本文残り74% (3086文字/4182文字)

1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。