【樋口美穂子〈中〉】浅田真央と宇野昌磨 「すごく自分を成長させてくれた」

日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の信念に迫る「氷現者」をお届けしています。

シリーズ第9弾は初の指導者編として樋口美穂子の来歴をたどります。昨年3月、新クラブ「LYS」を立ち上げて1年が過ぎました。全3回の「中編」は、グランプリ東海クラブ時代のコーチとして過ごした日々を振り返ります。プログラム作りのこだわり、世界に羽ばたいた教え子の浅田真央、宇野昌磨との出合いがありました。(敬称略)

フィギュア

   

14年全日本選手権、フリー後、疲れ果てた表情を見せる宇野(当時17歳)を笑って迎えた樋口。左は山田満知子

14年全日本選手権、フリー後、疲れ果てた表情を見せる宇野(当時17歳)を笑って迎えた樋口。左は山田満知子

タワレコで1日中曲探し、20歳から続く振り付け

名古屋市中区栄、繁華街の中心に位置する百貨店パルコ、その6階には「タワーレコード」がある。

1980年に日本初出店を果たした米国発祥の大手CDショップ。すでに米国本土では廃業してしまった外資チェーンの店内が、少し前まで“発掘現場”だった。

「CDっていま、買うのかな。1曲のためにCD3000円ぐらいですよ。でも、買ってたんですよね。本当にお金をつぎ込んでますね」

欠かせない投資だった。

「ジャケットの時もありますね! これかっこいいみたいな。でもジャケットは大きいと思いますよ。ジャケットがあまり良くない作品はなんとなく、どうなんだろうと」

今日は1日かけて曲探し-。

そう決めて店舗に並んだCDを手に取り、試聴ができれば次々にヘッドホンをかける。

「名曲、王道はありますけど、極力、みんなが使わない曲がいいなと」

こだわりは人一倍。生徒の滑りを思い返し、耳から流れてくる音源を重ね合わせ、振り付けのイメージを膨らませていく。

「私、ずっと、ずっと、ずっと、聞いてました。いまは楽でいいですよね」

現在は音楽配信アプリなどを活用すれば、すぐに試聴はできる。

店に足を運ぶ回数は減ったが、もう何年だろう、そんな作品作りを続けてきた。

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。