コーダ(CODA)という言葉をご存じだろうか。今年のアカデミー作品賞を受賞した映画「コーダあいのうた」で少しは浸透したかもしれない。耳の不自由な親を持つ健常者をそう呼ぶ。映画は、聞こえない家族の中で通訳係を担っていたコーダの少女が、歌い手として夢を追うことに戸惑う物語だ。最後に家族が下した決断は感動的だった。

西村美智子
西村美智子

ボートレーサーにも西村美智子(38=香川)というコーダがいる。西村も映画のヒロインと同じく、幼少の頃から手話を覚えて、積極的に両親と健常者の通訳を続けてきた。コーダと親の関係性は複雑で、さまざまな葛藤があったはず。だが、西村は通訳を買って出ることで、周りから「ほめられるのがうれしくて仕方がなかった」と話した。そんな子供に両親が愛情を注がないわけはない。漫画「モンキーターン」や山川美由紀のレースを見て、レーサーを目指した西村を後押ししてくれた。

西村は、両親のためにレースの開会式などで手話を使って、感謝の気持ちを伝えてきた。8月2日からは、地元丸亀のプレミアムG1レディースチャンピオンに出場する。コロナ禍で両親に感謝を伝える機会が減った。「マスク装着も口の動きで情報を知る両親にとって邪魔になってる。同じ耳の不自由なファンもそう。だから、せめて勝ち上がることで感謝を伝えたい」。2児の母になっても進化を続け、今が最強のコーダ西村の奮闘を心から応援したい。