Jリーグも佳境に入りました。日本国内ではコロナが落ち着きつつありますが、いまだスタジアム内では大きな声を出すことができず、心のなかで叫ぶ日々が続いています。

その中で、日本ではブロックチェーン技術を活用した新しい形のクラウドファンディング方式がスポーツ界をにぎわせています。各競技のチーム、個人における新たな資金獲得方法として注目を集める中、世界各国でこのブロックチェーン技術を活用したプロダクトがスポーツ界を飲み込もうとしています。今回はこのブロックチェーン技術を活用したNFTについて注目してみたいと思います。

ブロックチェーンとは、一言で言うと、「取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術」という説明が一番でしょうか。データの改ざんが極めて困難であり、同時に破壊されるリスクも極めて小さいことから、近年一気に広がりを見せた技術でもありますが、これがスポーツ界にどの様な形で使われるかというと、チケットの管理などに活用される可能性があります。複製や偽造などの違法行為を防ぐだけでなく、それぞれのチケットに購入者の情報を紐付けることによって、「大量にチケットを購入してオークションなどで高値で売りさばく」事もできなくなりますし、ダイナミックプライシング(価格変動)システムを逆手に取るような行為がなくなるので、異常な価格にまでチケットの値段が釣り上げられることもなくなると言って良いでしょう。同時にチケットを購入するユーザーもスマートフォンでチケットを管理することができるため、チケットを自宅に置いてきてしまったり、紛失して会場には入れないといったトラブルも減らすこともできるのではないでしょうか。

チームや選手にとってみれば、先に述べたように新しい資金調達源となっています。独自の仮想通貨を専用のプラットフォーム上で発行し、それらの通貨でチームに関連するサービスを提供します。ファンはその通貨を購入することで金銭が発生し、チーム・個人の売上につながるという仕組みです。コロンビア代表のハメス・ロドリゲス選手は自身のオリジナル仮想通貨を発行し、ファンとの交流を繰り広げると同時に活動資金を調達しており、先行販売時にはわずか12秒で日本円にして約5500万円を集めたことで話題になりました。

日本でも西武ライオンズが今年の9月にNFTコンテンツの販売を開始しました、NFTコンテンツの販売は、日本プロ野球界初の取り組みです。「栗山巧外野手の通算2000安打達成記念のパネル」などをサイン入りでNFT化されたデジタルデータと現物をセットにして数量限定で販売。チーム公式発行の証明書付きグッズを手に入れることができる機会としており、これをファンが購入することで成立します。将来的にはファン同士がコンテンツの売買や譲渡ができる二次流通機能の実装を予定するなど、今後のさらなるマネタイズに期待することができます。

8月にはサッカーでもOneSportsとアクセルマーク株式会社が2社で共同開発を進めるブロックチェーン型スポーツゲームでJリーグとライセンス契約を締結しておりますし、個人レベルではアルゼンチン代表のスーパースター、メッシ選手も「The Messiverse(メッシバース)」と呼ばれるNFTコンテンツを発売するなどしております。

サッカー、野球だけでなく多くの競技でこのブロックチェーン技術が使われたプロダクトが広まったことにより、このコロナ・ショックとも言える危機を乗り越える新しい資金調達方法がスポーツ界を支える新しい柱となることは、新時代の到来とも言えるのではないでしょうか。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)