ドルトはすべてがすごかった-。ブンデス1部のドルトムントが七夕の7日、アジアツアーとしてJ1川崎Fと対戦した。プレー以前に驚かされたのが、ドルトファンの多さ。試合前日の6日午後7時から、等々力競技場で練習が一般公開されたのだが、雨にもかかわらず、メーンスタンドには約5200人がぎっしり。試合当日は、最寄りのバス停から競技場までの道で「チケット譲って下さい」とボードを掲げる女子が次々と現れた。人気アイドルのコンサートでよく見かける風景が、サッカー界でも起こっていた。

 今年5月、静岡支局から異動し、初めて川崎Fの練習を見た時は、パス練習(通称・鳥かご)のスピードと正確性に「これがJ1のトップレベル」とため息が出たほど。だが、ドルトムントの「生鳥かご」は「こんなん、見たことございません…」のレベルだった。針の穴を通すような高速パスがつながり、サッカー担当歴3年目の自分ですら違いが分かるほど。長旅で疲れていても、ウォーミングアップの鳥かご練習ででこれほどのテクニックを出すとは…。

 試合は6-0でドルトムントが圧勝した。速い攻守の切り替え、裏への動きだし、縦への推進力は驚くばかり。難しさにあふれたプレーではなく、単純明快にゴールに向かう攻撃スタイルが印象的だった。得点を決めた19歳の丸岡満も「1タッチ、2タッチで、はたいて動くというシンプルなプレーで点を決めてドルトらしさが出た」と胸を張った。

 完敗の川崎Fの選手は「まじ、強かった」「パススピード、トラップの質、すべての面で向こうがはるかに上だった」「ポジションが的確で(相手が)立ってるだけで壁に見えてしまった」と脱帽。逆に、目の前のお手本に刺激を受け、第2ステージの開幕戦は多摩川クラシコで東京を2-0で下し、早くも「ドルト効果」が出ている。

 ドルトムントは、川崎Fとの試合の翌日、次戦の地、シンガポールへと旅だった。平日朝の羽田空港には、600人のファンがお見送り。かつて、芸能(音楽)を担当し、海外のトップアーティストの空港取材をしてきたが、それを上回るフィーバーぶりだった。「世界のドルトムントのすごさ」を肌で感じた3日間だった。【岩田千代巳】


 ◆岩田千代巳(いわた・ちよみ) 1972年(昭47)名古屋市生まれ。菊里高、お茶の水女子大を経て95年入社。主に文化社会部で芸能、音楽を担当。11年11月、静岡支局に異動し初のスポーツの現場に。13年1月から当時J1の磐田を担当。15年5月、スポーツ部に異動し、主に川崎F担当。