覚悟が込められた言葉だった。

 「落ちたら、僕が昇格させる。そのくらいの気持ちです」。

 こう話したのはアルビレックス新潟ユース出身のFW渡辺新太(あらた、流通経大4年)だ。来季の新潟入団が8月に内定した。

 大学に所属しながらJリーグの試合に出場できる特別指定選手にもなった。8月はさっそく、サテライトリーグの仙台戦でゴールを決めた。リーグ戦の柏戦では出番こそなかったが、ベンチ入りを果たした。

 その彼が、プロ入りの決意を力強く表現した。

 新潟は残り10試合で勝ち点10。J1残留の崖っぷちにいる。9月は全試合で勝ち点を挙げないと残留は難しい状況だ。

 渡辺はそんな中で、新潟加入を決めた。全日本大学選抜入りの経験もある有望株。下部組織出身とはいえ、進路の選択肢はそこに縛られる必要はない。残留争いで苦しむ出身母体ではなく、他のJ1クラブでのプレーが頭によぎってもおかしくない。

 「でも、やっぱり新潟でプレーしたいんです。子どものころから見ていたチームですから」。生粋の新潟っ子。昇格を決めた03年は小学生で、街の盛り上がりを感じた。新潟ユース時代はトップチームの練習試合にも出場。あこがれだった「アルビの選手」は、はっきりと目指す目標になった。ただ、高校卒業時、トップチームに昇格できなかった。その悔しさを忘れていない。大学の4年間、即戦力になるつもりで実力アップを図ってきた。

 今の新潟は、少年時代に見ていた状況とは大きく変わった。それでも、意志は変わらなかった。「ずっとアルビのことは気にしていました」。郷土愛。根源にあるのはそれなのだろう。将来を見据えたプランや周囲から提示される条件など、事情はあるにせよ、土台は揺らがなかった。

 8月、新潟は4連敗を喫した。ホームのデンカSで敗戦後、ブーイング以上にスタンドからは激励のコールが起きた。その後の試合でも同じだった。

 地域の結束、地元への思い。理屈ではない。渡辺の言うように、ずっと気にしているからこそ、なんとかしたいという思いは強まっている。現在、デンカSの入場者数は1万7000人ほど。04年のJ1初年度から半減した。それでも、あえぐ「おらがクラブ」を支えようという人たちは多い。

 残り10試合。この気持ちを裏切らない戦いを期待したい。【斎藤慎一郎】



 ◆斎藤慎一郎(さいとう・しんいちろう)1967年(昭42)生まれ、新潟県出身。15年9月から新潟版を担当。新潟はJ2時代から取材。サッカー以外にはBリーグ、Wリーグのバスケット、高校スポーツなど担当。