コンサドーレ札幌には4人の通訳が在籍する。言語の変換だけが通訳の仕事ではない。3月27日付の日刊スポーツ北海道版紙面で通訳にスポットを当てた企画を掲載した。コラムの場を借りて、あらためて選手をサポートする彼らの思いなどを伝えたい。

 札幌は選手、スタッフの出身国が6カ国の多国籍軍だ。ミハイロ・ペトロビッチ監督(60)が話すドイツ語を杉浦大輔コーチ兼通訳(43)が日本語に訳し、現在在籍するブラジル、英国、タイ出身の外国人選手のために3人の通訳がそれぞれポルトガル語、英語、タイ語に訳して伝える。韓国出身の2選手は、日本語でコミュニケーションをとっている。練習中、ピッチでは各国の言語が飛び交う。外国人選手にとっては監督の話を理解するのに時差が生じる。やりにくさはないのか? と浮かんだ疑問が、今回の企画のスタートだった。英語担当のハリー・ビッソル通訳(34)が教えてくれた。

 ハリー通訳 2回分聞けるからラッキー。次にミシャ(監督)が話す時間に訳してあげられる。日本語からの訳だけだと、話をまとめて言わないといけなかった。

 現場にとってはむしろ歓迎されていることがわかった。

 ペトロビッチ監督は感情豊かに話す。「通訳する時にその感情は表現するのか?」と、聞いてみた。

 杉浦コーチ兼通訳 表現する時もあるけど、例えば怒っている時は、結局は何を言われているのかが大事。監督の場合、見たら怒っているってわかりやすいし。自分までまくし立てるとね。もちろん選手の感情を揺さぶらないといけない時、ミーティングの時とかは自分も大きな声を出したりして表現する時もある。

 通訳としてうれしかったことを聞けば、やはり、あの場面に立ち会うことだった。体験したばかりのタイ語担当のティバポル・サンカパン通訳(34)が振り返った。

 ティバポル通訳 (3月18日長崎戦で)チャナ(チャナティップ)が初めてヒーローインタビューに立った時。やっと(ホームで)得点できて、やっと立てたから。

 通訳も選手とともに戦っているのだ。

 反対につらいこともある。札幌在籍18年目のポルトガル語担当の鈴木ウリセス通訳(36)は長く務めている分、悲しみを乗り越えた数も多い。

 鈴木通訳 ブラジル人選手が契約が終わって空港に車で送る時がつらいんだよね。プロの世界だからしょうがないけど、結構泣いちゃう。

 通訳は外国人選手が練習や試合に集中できる環境をつくる役目も担っており、私生活もサポートする。一緒に過ごす時間が長い分、絆も深まる。

 通訳は責任のある仕事だ。

 杉浦コーチ兼通訳 通訳と言っても中間管理職。人と人の間に立って、自分を通してみんなの仕事がうまくまわるようにオーガナイズするのが仕事。訳して伝わっていないのは自分のせい。(取材対応時の)言葉選びも気をつけている。日本語で(記事などに)流れるのは自分の訳なので。

 彼らのおかげで監督、選手の言葉を理解し記事で伝えることができている。とても感謝したい。これからもお世話になります。

 ◆保坂果那(ほさか・かな)1986年(昭61)10月31日、北海道札幌市生まれ。13年から高校野球などアマチュアスポーツを担当し、16年11月からプロ野球日本ハム担当。17年12月からコンサドーレ札幌担当。

コンサドーレ札幌の杉浦コーチ兼通訳(2018年3月22日撮影)
コンサドーレ札幌の杉浦コーチ兼通訳(2018年3月22日撮影)