アスルクラロ沼津が、今月3日、藤枝MYFCとの「J3静岡ダービー」を1-0で制しました。清水エスパルスとジュビロ磐田の対決とは違い、昨季から始まった歴史の浅いダービーですが、互いのプライドを懸けた熱い試合になりました。

 素早い攻守の切り替えから、前線へにボールを送り込む沼津に対し、藤枝はピッチをワイドに使いながら、多彩なパスワークを展開しました。沼津の吉田謙監督(48)は「互いが街のために戦った素晴らしい試合でした」とコメント。その表情には、充実感があふれていました。

 沼津は現在10節を終えて、首位に立っています。昨季は3位で今季の目標は優勝。サポーターの熱も高まっていますが、J2ライセンスを取得しておらず、成績条件の「2位以上」をクリアしても、J2には昇格できないのが現状です。

 3月22日には、県、市の関係者、県サッカー協会の関係者ら25人が集い、「第2回静岡県東部地域サッカースタジアム構想連絡会」を沼津市内で開催。ライセンス取得の壁になっている県営の愛鷹多目的競技場の改修や、新スタジアムの建設について協議しましたが、厳しい現実が明白になりました。来季のライセンス申請期限は6月末で、それまでに「競技場改修」が決定しても、来季開幕までにリーグ適合検査に合格する必要があります。取得条件には、1万席以上の観客席(現在は5000席)、大型映像装置の設置、全ての客席を覆う屋根の設置などがあり、金銭面や工期の観点からも困難な状況。沼津の渡辺隆司社長も「ライセンス取得が厳しいことは分かっています」と話していました。

 この通り、行政頼みの「スタジアム問題」ですが、構想連絡会の前日には、沼津市の大沼明穂市長(享年58)が亡くなりました。市長は問題解決に前向きで、志半ばで逝去でした。

 申請期限の6月が近づく中、沼津市では4月29日に市長選挙が行われ、頼重秀一氏(49)が当選しました。頼重氏が選挙中に掲げた政策には「アスルクラロ沼津の支援・連携」があり、これを信じて1票を投じた市民のサポーターもいるはずです。選手たちは「ピッチで結果を出すことが僕らの仕事です」と言っていますが、行政、クラブ側の動きを頼りにしていることは、言うまでもありません。最終的には、市がどうやって県を動かすのか…。沼津担当記者として、行政の動向にも注視していきます。

 ◆古地真隆(こち・まさたか)1993年10月14日、静岡県沼津市生まれ。今年2月、静岡支局員として入社。J3沼津、アマチュアサッカーを担当。スポーツ歴はサッカー、野球。