7月15日。フランスのレキップ紙の記者が話した言葉が印象に残っている。

 「France can win without Zidane(フランスは、ジダンなしでも勝てるんだ)」

 その日、フランスはワールドカップ(W杯)ロシア大会決勝でクロアチア代表を4-2で破り、20年ぶり2度目の優勝を果たした。MFグリーズマン、FWエムバペら強力布陣がデシャン監督のもとで栄光をつかんだ。

 98年、母国で開催されたW杯で初優勝した。ジダンというスーパースターにけん引された。あれから20年の間、W杯の優勝から見放されてきた。そして負けるたびに、98年と比較されたという。輝かしい昔の記憶は美化もされるだろう。「あのときと比べて…」という代表への批評が、ずっと繰り返されてきた。

 なかば狂信ともいえる「ジダン信仰」を打ち破ったのだ。レキップのベテラン記者は言った。「今回のチームにMVPはいない。1人に決めることはできないんだ。その意味で、98年のチームとは違う。エムバペは、きっとジダンを超えられるだろうけどね」。今大会のチーム平均年齢は25・57歳。全体として若いチームに、エムバペという未来のスーパースターも誕生した。4年後、カタールでさらに強いフランスをみられることを期待してやまない。【岡崎悠利】

 ◆岡崎悠利(おかざき・ゆうり) 1991年(平3)4月30日、茨城県つくば市生まれ。青学大から14年に入社。16年秋までラグビーとバレーボールを取材し、現在はサッカーで主に浦和、柏、東京V、アンダー世代を担当。