清水エスパルスは、2大会ぶり出場の天皇杯で辛くも初戦を突破した。

広島県社会人1部所属の福山シティに1-0。後半ロスタイム、DF原輝綺(22)が決勝ゴールを挙げた。主力級を先発に並べながらも、薄氷を踏む思いでの勝利となり、天皇杯の難しさを改めて感じさせられた。

特に前半は主導権を握れなかった。相手のピッチの横幅を広く使った、精度の高い攻撃の組み立てに苦戦。プレスをかいくぐられた。最終ラインの一角で先発した原は「ボールを奪うことに苦労した」。後半は、サイド攻撃の比重を高めて押し込み、終了間際の決勝点につなげた。

負けたら終わりのトーナメント戦。その緊張感と難しさが、はっきりと表れた一戦だった。戦前、ロティーナ監督(63)は「相手は高いモチベーションで臨んでくる。カテゴリーの差が、気持ちで埋まることはサッカーでよくあること」。プロ2年目のMF鈴木唯人(19)は「先輩たちから『天皇杯は難しい』と聞いている。謙虚にやるべきことをやるだけ」。最大限に警戒を強めていても、勝負は終盤までもつれ込んだ。

プロ、アマチュア問わずにタイトルを争う伝統のカップ戦。下位カテゴリーのチームが、上位を破る『大物食い』も大きな天皇杯の魅力だ。それだけに国内トップリーグのチームの重圧は計り知れない。MF竹内涼(30)は「覚悟はできていた。でも、目的は点を取って勝つこと。そこはリーグ戦でも変わらない」と、目の前の勝利をかみしめた。ベスト4に進出した2大会前も初戦を1-0で制した。苦しみながらも、まずは最初の難関を突破した。【古地真隆】