北海道コンサドーレ札幌のエースFWアンデルソン・ロペス(27)がチームを離れた。

中国1部武漢への移籍交渉のためだ。サッカーの世界ではステップアップのため、出場機会のため、あらゆる理由で移籍はよくあることだ。だが、今回はある意味、新型コロナウイルスの影響もあるのではないかと考える。

ブラジル出身のロペスは19年に札幌に加入した。同年の本拠地デビュー戦で4得点した上に、喜びのあまりゴール裏の看板を飛び越えて約2・3メートルの高さから落下したうっかりハプニングに、サポーターの心をつかんだ。本人も「日本国籍を取得したい」と話したことがあるほど、日本、Jリーグ、札幌を気に入っていた。

だが、ロペスが最も愛するのは家族だ。19年は家族も札幌に呼び、一緒に楽しそうに暮らしていた。だが、コロナ禍の昨季から入国制限により呼ぶことができなくなった。リーグ中断期間中の昨年5月、家族が待つブラジルに帰国し、一時チームを離れたことがあった。今季も「会いたい。遠く離れていられない」とこぼすことがあった。それでも、試合で得点して長男が好きなスパイダーマンのパフォーマンスを披露するなど、寂しさを我慢して活躍。リーグ戦で12得点を挙げていた。

日本の入国制限の緩和は不透明。中国も同じく入国は制限されているらしい。どちらの国でも、家族と一緒に過ごすことができないならば…と、現在より金額面などで条件の良いチームを選ぼうとするのも理解できる。ロペスにとって家族は大切な存在だからだ。

もし家族が来日できていたら…と考えてしまう。J1得点王に輝いていたかもしれない。その姿も見たかった。移籍はまだ正式に発表されていないが、今はとにかく、ロペスの幸運を祈りたい。【保坂果那】

◆保坂果那(ほさか・かな)1986年(昭61)10月31日、北海道札幌市生まれ。13年から高校野球などアマチュアスポーツを担当し、16年11月からプロ野球日本ハム担当。17年12月から北海道コンサドーレ札幌担当。