北海道コンサドーレ札幌ペトロビッチ監督(63)が最近、冗談まじりに明かす“心配事”がある。

9日浦和戦2-1の勝利後の会見で、こんなコメントをしている。「本音としては若い選手たちがあまりいいプレーをしないことを願っている。彼らがいいプレーを続ければ必ず他からオファーが来て引き抜かれる。我々クラスのクラブの宿命だ」。札幌から東京オリンピック(五輪)のメンバー入りした選手はいなかった。残念な思いもあるが、世界舞台での活躍はアピールにつながる。もしかしたらオファーがあって大会後、札幌から旅立つことになっていたかもしれない。だから指揮官にとっては五輪メンバー選外をあまり気にしていない。

同じようなコメントをしていたことがある。6月19日大分戦。MF金子拓郎(24)が2ゴールを決め、2-0の完封勝利を挙げた後だ。「彼が2点取ったことで、ここから夏の移籍が始まるが、彼がどこかに持っていかれないかという心配をしなければいけない。1点だったら狙われなかったかもしれないが。半分冗談だけど」と笑っていたこともあった。13日がJリーグのウインドーの締め切りだが、こんなふうに“他クラブにバレてしまう”のはごめんと言いたげな様子だ。

もちろん指揮官は実際には、本人が希望した移籍は喜んで送り出す。それがステップアップにつながるならなおさらだ。自チームの若手選手の能力を誰よりも理解している。可能性に自信がある。だからこそ活躍し過ぎたら困ると、はっきり言えてしまうのだ。

それでも私は、札幌の東京五輪世代の選手たちがそろって「悔しい」と話し、成長を誓う言葉を聞いた。監督の思いに逆行するかもしれないが、彼らがすぐに森保日本代表監督ほかに“バレる”ことを期待している。【保坂果那】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆保坂果那(ほさか・かな)1986年(昭61)10月31日、北海道札幌市生まれ。13年から高校野球などアマチュアスポーツを担当し、16年11月からプロ野球日本ハム担当。17年12月から北海道コンサドーレ札幌担当。