J3宮崎のFW工藤壮人さんが21日、水頭症の治療と闘い、力尽きた。32歳だった。柏で挙げた得点はJ2時代も含めると66。どんな時にもあきらめず、果敢にゴールを奪い、チームにタイトルをもたらした。ピッチ外ではだれに聞いても「気遣いの人」との言葉が出る。工藤さんとともにタイトルを手にした戦友は、工藤さんが柏に残したDNAを後輩に伝えていく。

MF大谷秀和(37)は「苦しい時にゴールを取ってくれる選手でもあった。ピッチを離れれば、他のチームの選手もコメントしているように本当にいいヤツで…。気遣いができて。とにかく、豪快に笑っている姿が(頭に)残っている」。

大谷は、工藤さんからメールを受け取っていた。今思えば入院中で手術前の時期。工藤さんは入院中であることを伏せ、逆に大谷に「(手術した)足首の具合はどうですか?」と気遣った。大谷は「やりとりした部分があっただけになおさら、まさかという気持ちが強かった。また僕もいつでも会えると思っていた。いつでも会えると思っちゃだめだなと…」。目は潤んでいた。

コーチとして後進の指導にあたる栗沢僚一氏(40)も、工藤さんの笑顔と、出場機会がないときにも真摯(しんし)に練習に取り組んだ姿が忘れられないという。「常にプラスに変えていく強さがあった。努力は裏切らないことが、見ていて分かった」。現状に満足せず、ゴールという結果を出すために努力する姿を見て刺激をもらった。それこそが、工藤さんがレイソルに残してくれたものの1つだと感じている。

栗沢氏は「彼を通して、自分が感じたことは伝えていかないとと思いました」と強調。大谷も「人への姿勢だったり、練習の態度だったり。学ぶことが多かった選手の1人。そこを、いろんな人に伝えていかないといけない」と、工藤さんが刻んだ柏のDNAを継承することを誓った。

後輩でパリ五輪世代のFW細谷真大(21)は工藤さんと同じ「19」を背負う。2月の鹿児島キャンプの練習試合で、工藤さんから「いつも見てるから。期待してる」と声をかけられたことがうれしかった。「工藤選手がこの番号を付けてこのスタジアムで決めてきたゴール数はすごいもの。自分も負けられない選手になりたいと思っている。結果で答えたい」。工藤さん同様、細谷もプロ1年目はリーグ2試合と出場機会はほとんどなかったが、腐ることなく努力を重ね、プロ3年目の今季は8得点を挙げている。工藤さんの残したものは、間違いなくレイソルに流れている。【岩田千代巳】