W杯出場を決めた日本代表について、サッカーを長く取材する記者たちが独自の視線で分析する「Nikkan eye」特別編の第3回は「異なるサッカー観」。

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 今の日本代表には“毒にも薬にもなる人”が2人だけいる。ハリルホジッチ監督と本田圭佑。ともに、他人を恐れず突き進むエネルギーがあり、何かをやってくれそうな期待感を抱かせる。一方で、どんな時も批判の対象になりやすく、刺激的な言動など共通点と、敵も多い。

 2人の信頼関係は、揺るぎなかった。

 「なかった」と過去形で書いた。2人の関係に変化が生じているのではないか、最近そう感じる。

 監督は今回、招集リストを異例の27人まで拡大することで帳尻を合わせ、本田を滑り込みで呼んだ。当初の序列はベンチ外。W杯出場を決めたオーストラリア戦も出番がなかった。今こそ、サッカー観の異なる2人で腹を割って話をすべきだ。

 まず、適性ポジションのすり合わせ。今のままの右FWなら本田は埋没するだけだ。スプリントを繰り返し裏を取り、相手を追い回す仕事は向いていない。オプションにはなり得るが、互いに理解した上で中盤中央へコンバートできないか。昨年秋にも意見をぶつけ合っている。この時は平行線だったが、もう1度すべき時でこれがラストチャンス。このままならどちらかは、9カ月後の本大会にいない可能性もあるだろう。

 代表というチームで、一選手の意見を聞く必要などない、そんな考え方もあるだろう。ハリルホジッチ監督は、どちらかといえばこちらで、頑固な本田に「本当に頑固」と苦笑いさせる鉄の意志を持つ。だとすれば、ロシアでいなくなるのは本田なのだろうか。

 チーム力を高め、W杯で好成績を収めようと思えば、本田の存在は不可欠だ。1人で点を決めて勝たせるメッシやロナルドのようなプレーはできないが、チームに勝者のメンタリティーを植え付け、後押しすることができる。代えの利かない存在で、軽視すればハリルジャパンは思うような結果を得られず、指揮官が続投できない苦境に追い込まれることもある。

 2日のジッダでの練習後、本田は控えである自分の状況を踏まえ、語った。

 「監督が言っていることが、まさに正しい、目からうろこの部分もあると思いますし、そうじゃない部分もあると思います。今までも議論してきましたし、これからもたぶん、議論していくと思います。すり合わせられるところは、すり合わせをして。最終決定権は僕にはないですから。監督が決めたところに僕が最終的に合わせる。結局、チームとして勝ちたいという思いは一緒なので」

 話し合い、理解を深め、手を取り合うなら今だ。それができなければハリルジャパンの物語は“毒にも薬にもならない話”で終わってしまう。【八反誠】