なでしこジャパンが2連覇を目指す女子アジア杯が開幕し、日本は7日に1次リーグ初戦のベトナム戦を戦い、4-0で勝利。決勝ラウンド進出へ1歩前進しました。日刊スポーツでは、今月3日から本大会での活躍が期待される注目選手をプレー内外の視点から毎日1人ずつ紹介する企画「なでしこの横顔」を開始。最終回は16、17年のなでしこリーグ得点王で、代表でもストライカーとして最前線に君臨するFW田中美南(23)です。

 

 なでしこの点取り屋が、アジアの舞台での飛躍を狙う。16年4月からの高倉麻子監督体制では、代表全23試合中19試合に出場。最前線で味方からのパスを受け、しっかりとネットを揺らす高い得点力で信頼を勝ち取っている。田中は「自信もつけてきて試合にも出ている状況で、自分がやらなきゃいけないと思っている」と自覚も口にする。

 母がタイ人のハーフで、5歳の時に兄の影響でサッカーを始めた。地元・川崎のクラブでメキメキと頭角を現し、中学1年になった07年に日テレベレーザの下部組織の日テレメニーナに入団。年代別代表に選出されるなどエリートコースを歩み、高校3年時の12年にトップチームに昇格すると13年3月にはA代表にも初招集された。

 なでしこリーグでは16年に18試合で18ゴールを挙げて初の得点王に輝いた。「本当に仲間がいいパスをくれて、みんなに頼りに頼ってとれた得点王だった」と謙遜するが、17年にも18試合15ゴールで2年連続の得点王を獲得。日本の女子サッカー界を代表するストライカーへ成長し、今シーズンからはクラブのキャプテンを元日本代表DF岩清水梓(31)から引き継いだ。「17年はみんなに頼ってとかじゃなくて、チームを勝たせる得点をとって結果的に得点王になれたらと思っていた。1-0とか拮抗(きっこう)した試合で点をとれることが増えて、自信になりました」。

 17年4月からは川崎市内のフィットネスクラブに勤務し、マシンの使い方などを教えるフロアスタッフとして働く。スタッフによると、自ら積極的に話しかけて接客するなど、訪れる客からの評判もよく、大人気。田中の影響で女子サッカーに興味を持ち、なでしこリーグの試合に足を運ぶ人もいるという。田中も「自分を通じて女子サッカーに興味を持ってもらって、リーグにも来たいというお客さまが増えてきているので、うれしいです」と喜ぶ。

 フィットネスクラブの休館日には、自身もトレーニングを行う。まだまだ向上心は尽きない。「今のままじゃダメだなっていうのはあります。もっと強くなりたいし、速くなりたい。まだ完璧じゃないので、完璧にできるようにしていきたいです」。

 サッカー選手としても、1人の社会人としても、女子サッカー界の発展に貢献している。初めて臨むアジア杯への思いも強い。「優勝すると女子サッカーの注目度も変わってくる。優勝して、W杯に弾みをつけられるいい大会にしたい」。

 日本のエースストライカーとして。期待とプレッシャーを力に変え、田中がその舞台に立つ。(おわり)【松尾幸之介】

 

 ◆田中美南(たなか・みな)1994年(平6)4月28日、タイ出身。日本人の父、タイ人の母の間に誕生。神奈川育ち。07年から日テレ・メニーナでプレーし、12年に日テレベレーザに昇格。10年U-17(17歳以下)W杯に出場し、準優勝。12年U-20W杯では全6試合出場で銅メダル。164センチ、56キロ。

 

 ◆AFC女子アジア杯 4チームずつ2グループに分かれ、上位2チームが決勝トーナメントへ進出。8チーム中5位までに19年フランスW杯出場権が与えられる。グループB組の日本は、7日にベトナム戦を終え、10日に韓国、13日にオーストラリアと対戦する。試合は全てテレビ朝日系列で生中継予定。