サッカー・アジア杯UAE大会で、2大会ぶりの優勝を目指す日本は21日午後3時(日本時間同8時)から、決勝トーナメント1回戦で強豪サウジアラビアと対戦する。注目の一戦で、日本を率いる森保一監督(50)は「森保家の家訓」を胸に、一発勝負を勝ち抜く構えだ。

森保監督の次男で、昨季はフィリピン1部リーグJPVマリキナFCでプレーした圭悟(25)が、20日までに日刊スポーツの取材に応じた。「どんなことも楽しもう」という父の教えを胸に、大学卒業後から海外でプレー。現在はドイツのクラブで練習参加中の次男から届いたエールに、父が勝利で応える。

20日、大事なサウジアラビア戦の前日会見で、決勝トーナメントのポイントに質問が及んだ時だった。まず同席したDF酒井が「先に失点しないこと」と答えた。森保監督は「私が言いたいことを先に言ってくれたので先に言えば良かったな」とほおを緩め「1人1人の力を発揮するチームで、お互い支え合ってプレーすることは続けてほしい」と求めた。リラックスしてベストを尽くす-。森保家に流れる一家の教えでもある。

その源流を体現しているのが次男圭悟だ。広島で生まれ、サッカーが身近にあった。「(3人)兄弟の中で一番サッカーが好きだと思います」。高校時代は広島ユースに所属し、強豪の流通経大では1年から公式戦出場。キック精度の高さ、俊敏性を持ち味に攻撃的な能力を発揮した。Jクラブ入りを目指したが、3年時の全日本大学選手権決勝で左足首の靱帯(じんたい)を損傷。約6カ月、戦列を離れたことで調子を落としたまま大学生活を終え、卒業即のJリーガーの夢は破れた。

父からの提案で目の前が開けた。「世界を目指してみたら」。進路に口出しされることはなかったが「どんなことも楽しむように」とずっと言われてきた。「そうだ。やりたいことを楽しもう」。知人の紹介もあり、オーストラリアでサッカー選手としてのキャリアを始めたが、2部リーグ以下はセミプロ。各州の優勝クラブで争う全国大会を制しても昇格がない中、1年目は17得点で2年目は9得点。得点力を開花させたものの、ビザの関係でオーストラリアを離れた。

その後、フィリピンでプレーしている最中、父が日本代表監督に就任した。「普段、連絡することはないのですが、決まった時は『頑張って』とメッセージを送りました」。JPVマリキナFCでは13ゴール10アシストを記録したがクラブの存続が難しくなり、現在はドイツのクラブで練習参加しながら合否を待つ日々を送っている。

父とは違う人生を歩むが、UAEとドイツでともに挑戦、勝負の日々。「サッカーは日本でもできますが海外で生活すれば世界が広がりますし、父と関係なく自分を見てくれるからいいですよね。アジア杯は楽しみです。でも今は自分のことで精いっぱいなので、父のことは気にしないようにしています」。言葉を交わさずとも、代表監督の重圧を受け止めながら“森保流”を貫く父と同時に「今を楽しむ」に徹する。

【取材・構成=和田憲明、浜本卓也】