夢のピッチに立つのは選手だけではない。サッカー女子の日本代表「なでしこジャパン」が臨むワールドカップ(W杯)フランス大会に、山下良美主審(33)、手代木直美副審(38)、坊薗真琴副審(38)、萩尾麻衣子副審(39)の4人の日本人審判が選出された。FIFA主催の国際大会に4人の審判員が選出されるのは日本サッカー界初の快挙。「Allez!(仏語で「行け」の意)なでしこ」第2回は、大舞台で笛を吹く山下主審の思いに迫る。

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山下主審は、託された大役に身震いしつつ「4人いることは心強いし、誇らしい。なでしこリーグを吹く審判員として恥じないレフェリングをしたい」と力を込めた。普段はジムのインストラクターとしてパートタイムで働き、仕事後に体力トレーニングなどに励む。日本協会関係者によると、選出には男性審判と同じ体力テストの基準をクリアしていたことも評価されたという。今月中旬には男子のAFC杯、ヤンゴンユナイテッド(ミャンマー)-ナガワールド(カンボジア)戦を坊薗、手代木両副審とともに担当。女性審判員トリオがAFC主催大会の試合を担当するのも初で「今後も継続して女性審判員にこうした機会が与えられたら」と願う。

今大会ではVAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)が女子W杯で初めて導入され、山下主審も3度の研修を受けて準備を進めてきた。「私は試合中にあまり話さないタイプ」というが、W杯では無線でつながる副審やVARらとのコミュニケーションを重要視し「一瞬で判断を下さなければいけない難しさがある中で、もう1度見直せるチャンスがあるのはいいこと。審判全員でコントロールしていきたい」と話した。

社会人でもプレー経験があるなど、元々は選手。そこから大学の先輩でもある坊薗副審に誘われ審判へ転身した。立場は変わったが「なでしこジャパンがゴールデンシャワーを浴びる姿をスタジアムで見ることができれば」と日本の躍進も祈り、夢の舞台へと臨む。【松尾幸之介】

◆山下良美(やました・よしみ)1986年(昭)2月20日、東京都中野区生まれ。東京学芸大卒。04年に4級審判の資格を取得後、社会人でプレーしながら審判の勉強も続け、12年に女子1級審判員を取得。15年より女子国際審判員(主審)に。15年、17年のユニバーシアード競技大会や、16年、18年のU-17女子W杯で経験を積み、19年女子W杯フランス大会の審判員に初選出された。