<ロンドン五輪アジア最終予選:日本2-1韓国>◇第2戦◇3日◇中国・済南オリンピック・スポーツセンター

 苦闘に耐えて、なでしこジャパンがロンドン五輪出場に前進した。1日の初戦タイ戦を温存されたMF沢穂希(32=INAC)が韓国戦で先発出場。1-1で迎えた前半ロスタイムに果敢に前線へ切れ込み、MF大野忍(27=INAC)の決勝点の起点になった。後半は国際サッカー連盟(FIFA)ランキング16位(日本は4位)と格下の韓国に攻め込まれたが、沢の臨機応変な布陣変更と献身的な守備で逃げ切った。開幕2連勝で勝ち点6とし単独首位。第3戦は5日にオーストラリアと戦う。

 公約通り、MF沢が魅せた。1-1で迎えた前半ロスタイム。敵陣左サイドに走り込み、相手と激しく競り合って奪うと、FW川澄へ左足でパスを流した。その1本のパスで韓国守備陣を混乱させた。川澄からMF大野にわたった決勝点の起点になった。「攻守にわたり魅せるプレーをします」。前日練習後の言葉を有言実行。大野に駆け寄り、両手で抱き締めた。

 オレンジ色のキャプテンマークを巻いた沢の存在感は別格だった。前半1分、約30メートルを全力疾走。一気にDFラインの裏に抜け出した。慌てて飛び出した韓国GK全にクリアされたが、ファーストプレーでチームにスイッチを入れた。その気迫が前半10分のMF阪口の先制弾につながった。

 初戦のタイ戦(1日)は、格下相手ということで沢ら中盤の主力4人は先発しなかった。W杯優勝メンバーで臨む韓国戦は、自信を持ってピッチに立った。しかし、W杯後の過密日程などでチームのコンディションは予想以上に悪かった。後半に入ると動きが重くなり、韓国に主導権を握られた。後半はシュート0。攻め手も欠いた。

 この窮地を救ったのも沢だった。後半開始から相手に合わせてシステムを4-4-2から4-1-4-1に変更したが、機能しなかった。その状況を沢の臨機応変の判断で変えた。「途中でダメだと思ったので、宮間やイワシ(岩清水)に伝えて戻しました」。守備でも貢献した。FWチ・ソヨン(池笑然)から繰り出されるパスを体で寸断。決定的なピンチにはDFラインまで戻って体を張って阻止した。

 勝利にも沢は反省ばかりだった。「久しぶりにしんどい試合でした。ボールを追い続けて疲れちゃった。明日、しっかりみんなでビデオを見て、修正したい。みんな危機感を持っている。大野がしっかり入れてくれたのが大きかった。勝ち点3は良かったけど、ぐったり負けた感はある」。

 今大会は通過点であることは選手たちの共通意識だった。「W杯後の2カ月は気の緩みはみんななかった」という。メダル獲得以上にアジア2枠獲得の厳しさは沢が一番よく分かっているが、左スネの負傷など順調なわけではなかった。

 沢の泥臭いプレーで勝ち点3をもぎとった。その試合ぶりに試合後、佐々木監督は言った。「本当に苦しい勝ち点3だった。コンディションも最悪だった。韓国の質も良かったがしのぎきった。(パスサッカーから)泥臭いなでしこに変わりました」。その顔には安堵(あんど)感が交じっていた。【鎌田直秀】