<U-20女子W杯:日本2-1ナイジェリア>◇8日◇国立◇3位決定戦

 ヤングなでしこが、U-20(20歳以下)女子W杯で史上初となる銅メダルを獲得した。3位決定戦のナイジェリア戦で、前半24分にMF田中陽子(19=INAC神戸)が無回転ミドル弾。後半5分にはFW西川明花(20)が追加点を挙げ、1点を返されたものの、逃げ切った。日本はフェアプレー賞も獲得。なでしこジャパンのドイツ女子W杯優勝、ロンドン五輪銀メダルに続いて、妹分のヤングなでしこも結果を残し、2015年女子W杯カナダ大会、16年リオデジャネイロ五輪でのメダル獲得も見えてきた。

 笑顔のち、悔し涙となった。試合直後、田中陽は晴れ晴れとした笑顔だった。ピッチに倒れ込む選手、泣き崩れる選手がいる中、笑顔でFW道上と抱き合った。スタンドにはJFAアカデミー福島時代の友人や、家族、ケガで今大会に参加できなかった仲間の姿があった。「自分だけでなく、応援してくれた人がいたからの結果。この内容と結果で気持ちを伝えられたことがうれしい」と満面の笑みを見せた。

 しかし決勝戦終了後の表彰式を終えると、目には涙が浮かんでいた。今大会6点を挙げ、得点ランク2位の証しであるシルバーブーツのトロフィーを手にし、胸には銅メダル。それでも金メダルに沸く米国選手の姿を見ると、悔しさがこみ上げてきた。「先輩の成績より低いので悔しい部分もあるが、中身が詰まったメダル」と話した。

 度肝を抜く先制ゴールで、チームを勝利に導いた。流れがナイジェリアに傾きかけていた前半24分、右サイドのFW田中美からのパスを受けると左足を振り抜いた。回転がかからず、左右に細かくブレる“無回転”シュートに、ナイジェリアGKも手を当てるのが精いっぱい。「前があいていたので、蹴ったら入った。試合の流れを変えようと思ったので、入ってよかった」と振り返る。

 準々決勝の韓国戦では、直接FKからの無回転ミドルを狙っていたが失敗。しかし今回は、動いているボールを無回転で決めた。「自分でもびっくり。今まで練習してきたことが出せてよかった。大舞台で決められたことは大きい」。本人も納得のゴールだった。

 サッカー偏差値の高さはチーム内でもNO・1。吉田弘監督も「陽子は技術もすばらしいものを持っているが、ピッチ内で考える力がある。練習中でも僕が指示すると、私はこう思う、やってみてもいいですかと提案してくる」。セットプレーでのサインプレーも吉田監督の考えるものに加え、田中陽も考えて提言する。1次リーグ第3戦のスイス戦、FKの際には、監督の「横山が蹴れ」の指示にも「聞こえませんでした」とサラリ。横山と相談して、自らが蹴った。

 同じクラブのなでしこジャパンMF沢も「小さくても軸がしっかりしていて、普段から一生懸命やっている」と評価。世界のDFと対峙(たいじ)すれば小さな157センチの体ながら、頭脳プレーで挑んでいる。

 ヤングなでしこではチームの主軸だったが、なでしこジャパン7人を擁する所属のINAC神戸に帰れば、サブ組だ。リーグ戦は途中出場の1試合のみ。それでも「中盤で勝負したい。練習をするだけ」と言い切った。なでしこジャパン入りに向けても「3年後には入っていたい」。さらに、表彰式後には「U-17(女子W杯)では銀メダル、今回は銅。あとは金メダルだけ。だから絶対にとりたい」と語った。2015年女子W杯のピッチを目指し、さらに強くなっていく。【保坂恭子】