熊本地震の影響で活動休止中のJ2熊本が、5月15日のアウェー千葉戦(フクアリ)からリーグ戦復帰を目指すことになった。池谷友良社長(53)らが21日、熊本市内のクラブハウスで会見。現在も9選手が車中泊を強いられる状況だが、被災地を離れず今月25日から自主練習、5月2日から全体練習を再開させる予定という。元日本代表FW巻誠一郎(35)は涙ながらに復興への決意表明を行った。

 巻は熊本地震の惨状に涙が止まらなかった。記者会見で「熊本が大好きなんで、感情が抑えられません」と泣きじゃくった。故郷を襲った震災に触れ、いまだ「サッカーを頑張ろうという気持ちになりにくい部分がある」というが「やるからにはプロとして、1人の男としてやらなければいけない」と決意表明した。

 この日、池谷社長や幹部、Jリーグ原副チェアマン、選手やスタッフで震災後初めて全体ミーティングを開いた。Jリーグからは5月3日のホーム愛媛戦を敵地でホーム扱いとして行う案や、一時的に拠点を県外に移すことも提案された。だが、その後の選手だけの話し合いで、いまだ余震が続く中、家族のそばにいて支えたいという意見が尊重された。復帰戦は同15日千葉戦が体調が戻るギリギリのラインとして、苦渋の決断を下した。

 会見に参加したのは巻ら4選手。主将のMF岡本は「休み過ぎは良くないし、1試合でも早くやった方がいいと思った。(復帰の試合を)選手から提案した」。それでも既に決まっていた2試合に加え、新たに5月7日札幌戦までの3試合が中止になった。

 14日に続き、16日未明にも最大震度7の大地震に襲われた。29選手中19人が県外に一時避難した。被害の大きかった益城町(ましきまち)出身で在住のGK畑ら10人は現在も避難所生活を強いられ、うち9人は車中泊。この日も3選手がミーティングに参加できず、家族の安全を最優先したブラジル人のFWアンデルソンが東京に、MFキム・テヨンが母国韓国に避難したままだ。

 練習場やクラブハウス、本拠地うまスタがある熊本県民総合運動公園内は救援活動の拠点として自衛隊などが利用し、5月2日の全体練習再開の場所さえ確保できていない。リーグ戦復帰後初のホーム開催となる5月22日水戸戦は、うまスタで開催できるかも不透明だ。それでも巻は「力強く前に進まないといけない」と声を振り絞った。復興のシンボルとして、選手らは立ち上がる。【菊川光一】