浦和レッズがまたもや大逆転で4強に進出した。前半に先制を許す苦しい展開から、興梠のゴールで反撃開始。退場者を出した川崎フロンターレを攻め立て、後半にズラタン、ラファエル・シルバがゴール。40分にMF高木俊幸(26)が逆転弾となる4点目を決めて4-1で勝ち、2戦合計5-4として08年大会以来の4強入りだ。済州(韓国)との決勝トーナメント1回戦に続くどんでん返しで勢いを増し、9月27日、10月18日の準決勝で上海上港(中国)と対戦する。

 真っ赤な浦和ゴール裏がどよめきたった。DF森脇が浮かせたパスをペナルティーエリアに送った。走り込んだ高木が左足ダイレクトで合わせたボールはGKの頭上をゆっくりと越え、ゴールへ吸い込まれた。「完全に折り返すつもりだった。持ってますね」と照れ笑いするミラクルゴール。高木は歓喜の輪の中でもみくちゃにされた。

 先制点を許す最悪の立ち上がりだったが、1-1で迎えた後半は押しまくった。25分にFWズラタン、39分にラファエル・シルバが決めて2戦合計で同点。高木が逆転劇を締めくくる殊勲の1発を放った。

 高木は今季出遅れた。1月に右第5中足骨を骨折。全治約3カ月だった。「頭が真っ白になった」。初めてキャンプに参加できず、約1カ月半は松葉づえ生活だった。「右足を地面につくのが怖い」という状態から孤独なリハビリが続いた。歩けるようになっても、体が右足をかばって左に傾く。「体の左右のバランスが大きく崩れた」。サッカーから離れた時間は競技人生最長だった。

 メンバーを固定するペトロビッチ前監督の体制ではなかなか出番がなかった。7月下旬に堀監督体制になってからは調子がいい選手が試合に出る環境ができた。「やればやった分だけ使ってもらえる」。競争心に燃えた。今も「まだ蹴れていない感覚はある」が、プレーへの飢えが体を突き動かした。直近の公式戦の9日柏戦では先発しながら結果を出せず、ベンチを蹴った。「何も残せなかった。その悔しさだった」。たまっていた自身への不満をゴールで吹き飛ばした。

 浦和はJ1で8位と優勝は絶望的で、連覇を狙ったルヴァン杯は準々決勝で敗退した。だが、10年ぶりのアジア制覇へ前進した。高木は、大歓声に包まれながら「ここまで来たら決勝に進みたい」と力強く宣言。さわやかな笑顔で埼玉スタジアムの夜空を見上げた。【岡崎悠利】  

 ◆高木俊幸 たかぎ・としゆき。1991年(平3)5月25日、横浜市生まれ。東京Vユース-東京V-清水とプレーし、15年に浦和に加入。J1通算160試合出場24得点。父は元プロ野球選手の高木豊氏。170センチ、62キロ。

 ◆決勝トーナメント1回戦での浦和の2点差逆転 5月24日の済州(韓国)とのアウェーでの第1戦に0-2で敗れたが、31日のホームでの第2戦に90分間で2-0と追いつき延長戦に突入。延長後半9分、DF森脇が決勝点を挙げて2戦合計3-2で勝った。ACLのホームアンドアウェー方式で日本のクラブが2点差を逆転したのは初めてだった。ただ、試合後には両チームがもみ合い、乱闘騒ぎがあった。済州はベンチ選手2人を含め計3人が退場、浦和も警告2枚が出された。