湘南ベルマーレの曹貴裁監督(48)は、ファジアーノ岡山に引き分け、3年ぶり2度目のJ2優勝を決めた試合後の監督会見で、「来年のことは本当に全然、考えていない。自分も本当にフルパワーを使ってやってきた。何月何日に始まって、どこにキャンプに行って、どこと開幕戦に当たると考えることは今、正直できない」と言い切った。

 その上で「僕は僕でしかないから、どんな状況であっても前向きに生きていこうと思っているし、生きたいと思っているし、今年所属した選手が次のステージで活躍してもらいたいって、本当に強く思っているし。それだけは変わらないと言うことが、僕の中で真実の1つであり、全てだと思います」とも語った。

 曹監督は「自分の言葉が、ウソくさいと思うこともあった」などと、チームを率いて6年目となった今季の葛藤も赤裸々に口にした。会見の中で「このクラブを何とかしたいという気持ちは、僕は恐らく人よりは強いと思っていて」と、湘南への思いを口にした上で、次のように語った。

 曹監督 何とかするというのは、目の前の結果もそうですけど、成長できそうな選手を、どんどん世の中に送り込むというか…そういったサイクルを続けないと、こういうチームが1つの文化とか、色を出していかないとJリーグの中で異彩を放てないと、ずっと思っていた。ただ、J2に降格して、去年の試合内容など、ウソくさいと思うことがたくさんあって。当たり前ですけど、勝ち点3を目指すスポーツであるのに、何か勝ち点3以外の条件やものを無理やり引き出しから引っ張り出したような気分になることが、すごくあった。5~10年後の未来を、俺は出来ない。それを俺が考えてやろうとしても、結局は10年後に至らないまでに、何かアクシデントでどうなるんだろうと。

 曹監督は、1月末からのスペイン合宿から戻り、開幕10試合目くらいまでは「舟をこいでいても、どっちに行くんだろう…このまま沈む可能性もあるけれど、どうやったら浮けるんだろう。水面から顔を出せない中、1ミリか…顔が上がって、あそこの光があるなと歩んできた1年だった」と苦しんでいたことを吐露。その上で「今も顔が完全に水面から上がったとは、個人的には全然、思っていない」とも語った。

 J2降格が決まった16年10月22日の大宮アルディージャ戦後、曹監督はロッカールームで、選手、スタッフ1人1人に「ごめん」、「すまなかった」などと涙ながらに謝罪した。今季は残留に足りなかった何かを求め、J2で戦ってきた1年だった。求めていたものとは何か、つかむことは出来たかと聞かれると、次のように答えた。

 曹監督 落ちた時に、確かに足りなくて降格したんだと思う。逆に(監督初年度の)12年、(J2最多の勝ち点101を挙げて史上最速の昇格を決めた)14年に力があって昇格したかと言うと、一概には言えない。力とは、このチームに自然に宿るもの。そんなことは降格したら誰も評価しないけれど、それが大事だと僕は思っている。ニコニコ楽しくやっていたわけじゃない。苦しみとか迷いが伴ってやっていたはず。

 曹監督は、7月に大宮アルディージャから加入したFWドラガン・ムルジャが「出ている人と出ていない人が、こんなに同じ空気で練習するのは、プロ生活で所属したクラブで初めてだ」と語ったことを付け加え、J1から降格した16年にはなかった、一言では表現できない力が伸びたことを示唆した。【村上幸将】